2023-06-24 経済

スイスの秘密主義が阻む対ロシア制裁

注目ポイント

スイス連邦政府はこれまで、秘密主義の企業に最終的な所有者の情報開示を義務付け、透明性を向上させる法改正を行うべきだとの声に背を向けてきた。だが、対ロシア制裁で風向きが変わるかもしれない。

キーティング氏は「スイスは、潔白を証明するために特別な努力を払うべき国の1つだ。まともな会社登記簿も無い状態では、説得力が無い」と指摘する。

 

抜け道とアクセス

しかし、中央登記簿の設置で基本的合意ができたとはいえ、どのような情報を含めるべきか、それをどのように検証し、誰がアクセスできるようにするのかなど、さまざまな点で活発な議論が続いている。

2018年のEU第5次マネーロンダリング防止指令は、登記簿を一般公開することとした。しかし、欧州司法裁判所他のサイトへは22年11月、プライバシーや個人データ保護の権利を阻害するとの判断から、一般市民によるアクセスを無効とする判決を下した。

これを受けマルタ、キプロス、ルクセンブルクなど金融秘密主義や不透明な企業の本拠地で知られるEU加盟国は、数日内に登記簿へのアクセス制限を行った。

チューリヒのコンサルティング会社KPMGの税務・法務担当ディレクター、フィリップ・ツュンド氏は、スイス政府に登記簿を公開するつもりがないことは驚かないと言う。「この国には金融のプライバシーを守る伝統があり、それは私たちのDNAに刻み込まれている」

だが、国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」で不正資金の流れに関する活動を率いるマイラ・マルティニ氏ら透明性の擁護派は、制裁逃れの追跡には一般公開が必要だと訴える。

マルティニ氏は「所有権についての情報を得るだけではなく、その情報を検証すること、そして当局が適切に使いこなすことが必要だ」と話す。「当局にデータ分析や調査のキャパシティーもしくは権限が無いというケースがとても多い。オリガルヒ資産を特定してきたのは、当局ではなくむしろジャーナリストや活動家らだ」

同氏は、制裁規則の抜け穴やグレーゾーンのせいで当局が不正のサインを見過ごさざるを得ない場合は、なおさらそうなると話す。

その一例が、実質的支配者の正体を隠すためのダミーだ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に数百万フランが送金された疑いのあるチューリヒの複数の銀行口座他のサイトへは、受益者としてロシアのチェロ奏者セルゲイ・ロルドゥギン氏が登録されていた。

スイスの法律事務所LALIVEのパートナー弁護士で、ホワイトカラー犯罪とコンプライアンスが専門のシモーネ・ナーデルホーファー氏は「自己申告だけでは不十分だ。その情報を検証し、状況の全容を把握する方法も必要だ」と話す。

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