注目ポイント
山東省の淄博(しはく)市がバーベキューで有名になり、人気観光スポットとなったが、観光客誘致を最優先する当局のために地元住民は負担を強いられているという。
翻訳者:椙田雅美
山東省中部に位置する淄博市は、もともと石油化学や陶磁器製造を行う地方工業都市だった。羊肉をメインとする「淄博バーベキュー」がインターネットからブームを呼び、中国全土から観光客が訪れるようになった。しかし米国『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、このブームは中国人が爆買いや贅沢から節約志向の消費や娯楽に転じたことを反映しており、節約志向が中国の景気回復を遅らせるだろうと報じている。
5月26日付同紙によると、中国では2022年末のゼロコロナ政策緩和以降、消費と観光が増加しており、中国政府は消費増加による景気回復を期待しているという。
5月初めのメーデー連休中、国内旅行に出かけた中国人の数はコロナ前の2019年の同時期と比べて19%増加したが、観光支出総額は0.7%の増加にとどまった。中国のインフレ率も0%に近く、消費者支出の低迷により4月の消費者物価指数(CPI)上昇率はわずか0.1%と、ここ2年間で最も小さな伸び率となった。中国経済全体も精彩を欠き、4月期の若年層失業率は2022年末の16.7%から上昇して20.4%となり、過去最悪の記録を更新した。
同紙によれば、人気観光スポットとなった淄博市には、今年3月だけで480万人の観光客が訪れ、住民人口470万人を上回った。至るところに野外バーベキュー店があり、夥しい数の観光客が羊肉を串に刺して焼いたシシカバブ(中国語では“羊肉串”)や野菜を焼き、薄く焼いた円形のパン(中国語では“小饼”)に包んで食べていた。食事の供となるのは安価なビール。2人で食べて飲んで、会計はわずか140元 (約2730円) 程度だという。ゼロコロナ政策が緩和されて初めての旅行が淄博だったとい観光客も多かったが、消費額は決して高くない。同紙は、これは中国人が爆買いや贅沢から節約志向の消費と娯楽に転じたことを反映しており、中国経済の回復に影響を及すと指摘した。

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淄博がなぜ人気観光スポットに?各地政府から視察団を派遣
米国『ニューヨーク・タイムズ』も、地味な工業都市に過ぎなかった淄博市が突如として人気観光スポットになった経緯について報じている。
「淄博バーベキュー」ブームは、学生のSNS投稿が火付け役といわれている。客が自ら肉を焼くスタイルや、人気店のシシカバブでも1串1元(約20円)程度という安さが注目され、学生が大挙して押しかけるようになった。インターネットのインフルエンサーや、有名人、マスコミがこれに追随し、ブームは瞬く間に広がっていった。淄博市にあやかろうと、各地の政府当局が現地調査のために視察団を派遣している。