注目ポイント
北朝鮮労働党の執行部は、先月行われた同国初の軍事偵察衛星打ち上げを「最も重大な失敗」と認識し、再挑戦することを宣言した。また、「強力な核兵器の増産実績」を継続して生み出す必要性を指摘し、核の増産方針を維持していることが鮮明になった。先週末に開催された朝鮮労働党の会議で発表されたもの。
国営・朝鮮中央通信は今週、16~18日に開かれた朝鮮労働党の「中央委員会第8期第8回拡大総会」で、5月31日に初の軍事偵察衛星を打ち上げたものの直後に墜落し、失敗したことを認め、党は研究者らに失敗の分析を命じると共に、責任者らを「糾弾」したと報じた。
今回の打ち上げは、米国や韓国の行動をより詳細に監視するための衛星監視システム構築を目指したものだったが、総力を挙げての打ち上げが失敗したことは、北朝鮮の最高指導者・金正恩総書記を激怒させたとされる。
軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した「千里馬1型」ロケットを打ち上げたが、1段推進体の分離後、2段推進体の故障で軌道に乗せることができず、韓国・全羅北道の於青島(オチョンド)西側200キロの海上に落ちた。
韓国軍合同参謀本部は16日に、海中から2段推進体と推定される円筒形の物体を引き揚げたと発表。国防科学研究所(ADD)などの専門機関で精密に分析し、中露などからの技術移転の有無なども把握できるとしている。
米韓両国は今回の発射を非難し、北朝鮮による弾道ミサイル技術を用いた実験を禁じた国連決議に違反すると訴え、専門家は大陸間弾道ミサイルの開発と宇宙発射能力は、技術的にはほぼ同等だとしている。
北朝鮮がいつ2回目の発射を試みるかについて、朝鮮中央通信は正確には伝えていないが、韓国の諜報機関は、北朝鮮が今回の失敗の問題点を精査するためには少なくとも数週間かかるとしている。
朝鮮中央通信によると、中央委員会拡大総会で指導部は、「敵対勢力の戦争挑発策動によって、朝鮮半島情勢は極度に悪化している」と米韓を非難した上で、「強力な核兵器の増産実績」を継続して生み出す必要性を指摘。核の増産方針を維持していることが鮮明になった。
また総会は、米韓との対峙が強まる中で中露との連携を深める方針を打ち出したが、対日姿勢を示すことは避けた。北朝鮮は先月29日、日本が関係改善を模索するなら日本と「会えない理由はない」との外務次官談話を発表。一方、今月15日には日本の排他的経済水域(EEZ)内に短距離弾道ミサイル2発を着弾させた。
一方で、朝鮮労働党は経済分野で「今年初めに起きた問題を克服するための措置を取ったこと明らかにした」と同通信は伝えた。内容は不明だが、総会での報告は経済面で成果を打ち出せず、好転を示せなかったようだ。
総会での金正恩党総書記の発言は報じられていないため、演説がなかったとみられる。党の重要会議では異例で、韓国政府は、経済の不振がその背景にあるとみている。総会報告では経済主要部門で「重大措置」と「経済計画規律を強化する対策」を取り、その結果「不安定な動きが顕著に克服された」と説明した。