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ウクライナ南・東部で、ロシア軍に対する大規模な反転攻勢を続ける同国の部隊について英国防省は今週、ウクライナ軍がわずかな前進を果たしたと分析した。だが、進軍速度は落ち、南部戦線で両軍に多くの戦死者が出ている。ロシア軍は総力で激しく抗戦し、東部ドネツク州バフムトでの3月の激戦以来、最悪の損失になったとみられる。
占領地域からロシア軍を排除するため、ウクライナ軍は大規模な反転攻勢を展開する中、両軍の部隊はおびただしい死傷者を出していると英情報機関が最新の分析結果を今週発表した。ロシア軍の損失は、おそらく激戦となった3月の東部ドネツク州バフムト戦以来、最悪のレベルにあるとしている。
英情報機関によると、最も激しい戦闘はザポリージャ州南東部や東部ドネツク州の要衝バフムト周辺に集中している。今回の分析結果によると、ウクライナがこれらの地域で攻勢に出た結果、「わずかな前進をした」とする一方、ロシア軍はウクライナ南部で「比較的効果的な防衛作戦」を展開しているという。
ウクライナのマリャル国防次官は19日、ロシアが全軍を投入し激しく抗戦しているため、進軍が非常に困難になっていると認めた上で、任務は予定通り果たしていると強調した。戦果への期待や焦りが国民に広がる中、現時点での集落奪還や進軍距離で軍の作戦が評価されるべきではないと訴えた。
マリャル氏は12日、反転攻勢1週間の戦果として計7集落を奪還し、計90平方キロの領土を取り戻したと発表した。だが、19日に2週間の戦果として追加できた奪還集落は8つ目の南部ザポロジエ州ピャチハトキだけ。取り戻したとする領土も計113平方キロにとどまった。ゼレンスキー大統領は19日の動画声明で「彼ら(ロシア)は陣地を失うばかりだが、私たちは失っておらず、解放しているだけだ」と述べ、国民に理解を求めた。
西側のアナリストや軍関係者らは、占領地域からロシア軍を排除するためのウクライナの反攻は、西側供給の先進兵器を使用しても1000キロにおよぶ前線に沿った攻撃には長期間かかる可能性があると警告している。
そんな中、ロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は今週、ウクライナの最前線に送られた3万2000人の元受刑者が、契約終了をもって既に帰還したことを明らかにした。
これまでプリゴジン氏はロシア各地の刑務所を訪れ、ワグネルとの傭兵契約をした上で、最前線で6か月の任務を満了した場合、恩赦が与えられると約束し、受刑者を勧誘。先月のインタビューでプリゴジン氏は、合計約5万人の元受刑者を集め、うち約1万人がバフムトで戦死したと述べた。
同氏はまた、契約終了者に83件の再犯が確認されたが、その数は受刑者が刑務所から出所した場合に比べ、80分の1の少なさだと強調した。