2023-06-21 政治・国際

認知戦か?中国“戦狼”外交官がフェイクニュースで過激ツイート 民間非営利報道機関が指摘

© 薛剣・駐大阪中国総領事(中華人民共和国駐大阪総領事館ホームページより)

注目ポイント

日本語を駆使し、SNSでの過激な米国批判や台湾問題への言及などから、言葉の“戦狼”外交官として知られている中国の薛剣・駐大阪総領事(大使級)が、フェイクニュースをもとに台湾の警察官の行動を批判し、天安門事件の惨劇への信憑性を疑わせるツイッター投稿ををしていたことが、米国系の民間非営利報道機関による報道で明らかになった。薛氏の言動の信頼性を損なうミスとみられるが、意図的に行っていた可能性もある。その場合、民主化された台湾に親近感を持ち、中国の人権問題を懸念する日本社会を攪乱し、中国に有利な世論へ誘導する「認知戦」のひとつと見られ、手口の一端が明るみにでたかっこうだ。

しかし、駐大阪中国総領事の薛剣氏は、これら虚偽情報を映像とともに自身のツイッターに投稿、発信。台湾の警察官の行為の過激さが「米国様」ゆずりだとして、台湾や米国、民主主義への嫌悪感を煽る内容となっている。投稿した合成写真の右半分は、米国のフロイド事件の際に流布された写真がそのまま使用されていることも指摘された。

 

「仰天ネタ!」とフェイクに大はしゃぎ

薛氏はまた、1989年6月4日の天安門事件から今年で34年を迎えたのに合わせ、ツイッター上に流布されたフェイクニュース映像をとりあげていたことも、同じくRFA報道で指摘された。

6月5日にツイッター上に流れていた、「私は今年55歳。30年前私の20歳の息子は天安門で(人民)解放軍に殺された」という映像付きの投稿を取り上げた薛氏は同6日、「仰天ネタ!55歳の女は20歳の息子が30年前に天安門で殺害されたとカメラに向かって涙ながらに訴える。――海外でCIAなどをバックに専門反中俳優業を営み、お小遣いを稼ぐ役者達は極わすかにいるが、時々このように噴飯ネタを作り出して人々を楽しませている。喜感満々!」とリツイート。ほくそ笑む顔絵文字2つを並べていた。

薛剣・駐大阪中国総領事が投稿したフェイクニュースに基づくツイート(Twitterより)

 

確かに現在55歳の女性なら30年前は25歳のはずで、その当時「20歳の息子」がいたはずはなく、天安門事件自体の信憑性に疑問符がつくような映像だ。

これに対しRFAは「55歳の『天安門の母』は30年前に20歳の息子を人民解放軍に殺された?」と題し、やはり先述の民間ファクトチェック機関の調査結果として、この映像が、天安門事件をとりあげた香港TVBテレビの報道番組の動画のスクリーンショットであることを確認し、画像は改ざんされ、字幕も元来の映像の女性の話す言葉とは無関係だったことが確認された、としている。

このフェイク映像が初めて公開されたのは2019年で、女性の「天安門事件」を指す発言内容が「30年前」となっているのはこのためだ。

これについて台湾のファクトチェック機関は2020年にすでにこの噂を否定する報告書を発表していたが、映像は最近までインターネット上に出回っていた。事実は天安門事件で「夫を失った女性」の証言映像だったという。香港TVBテレビがオリジナルの報道を削除してしまったため、一般市民がこれが偽情報であると見破るのは困難となっていた。

ファクトチェック機関の調査結果をもとにツイッター上のフェイクニュースを指摘したラジオ・フリー・アジア(RFA)の2023年6月6日の報道(RFAホームページより)

日本のツイッターでは、この映像に「反中国主義者は本質的にIQが低いのか、数学ができないのかは分からない」などと、中国の人権問題などに批判的な立場の人々への攻撃的なコメントがつけられていたが、薛氏は「天安門事件から34年」の今年6月に、4年前に出回ったフェイク映像にもとづき、天安門事件で発生した惨劇への信憑性を疑わせるようなツイートを意図的に発信をしていたことになるが、映像の中の女性が天安門事件を「30年前」と語った点については、疑問を感じなかったということになる。「祖国愛に燃える中国の大使級外交官」が自らのツイートで「数学(算数)ができない」ことを宣言したのも同然という、皮肉な結果となった。

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