注目ポイント
リチウムイオン電池は、今や中国以外の国でも産業化が進んでいる。サウジアラビア公共投資基金(PIF)のモハマド・ビン・サルマン・ビン・アブドゥルアジズ会長は、電気自動車(EV)「Ceer」を立ち上げるとともに、国内外の投資も呼び込むと強調した。
中国がリチウムイオン電池分野で主導権を握るのを防ぐため、サウジは欧米と協力してバッテリーの原料であるリチウムのサプライチェーン構築に取り組んでおり、2番目に建設中の大型リチウム精製施設では、2026年に水酸化リチウムの生産が始まる予定だ。これにより、鴻海とサウジが共同開発する電気自動車「Ceer」への追い風になると期待されている。
サウジ、欧米諸国と協力し、リチウム鉱石の処理能力を拡大
電気自動車産業が急成長している今、中国は電気自動車バッテリーの主要原料であるリチウムにおいて強い存在感を示している。 実際、中国のリチウム鉱石埋蔵量は世界の6割を占めており、その優位性は埋蔵量のみならず、リチウムの生産能力と技術にも強みを持っている。
中国の企業は長年にわたり、高度なリチウム採掘技術を習得し、生産設備の効率化に努めてきた。それゆえ低コストでリチウムの生産が可能となった。 さらに、中国はリチウムイオン電池技術を改善し、電池のエネルギー密度と航続距離を向上させるために多額の資金と研究開発能力を投資しており、電気自動車産業の発展を一層促進している。
また、中国のリチウム鉱石は、多くの海外投資も呼び込んでいる。世界の大手リチウム電池メーカーがこぞって地元の鉱物資源と安価な労働力を活用するため、中国に生産拠点を設立しており、ひいてはサプライチェーンの下流に位置するBYDなどの電気自動車メーカーの成長を後押ししている。
リチウムは新エネルギーの台頭を象徴しており、中国が将来のエネルギー産業を牛耳ることにならないよう、各国は新たなサプライチェーンを次々と構築し、リスクを分散している。 『フィナンシャル・タイムズ』の報道によると、サウジは欧米諸国と合弁で、同国2番目のリチウム精製施設の建設を計画している。
同紙は、サウジのリチウム精製施設はオーストラリアで上場している新興企業ヨーロピアン・リチウム社が関わっていると指摘。 ヨーロピアン・リチウム社は、サウジのコングロマリット(複合企業)オベイカン(Oveikan)グループと提携し、3.5億~4億米ドルを投じて2026年に最初の水酸化リチウム生産を計画している。両社は、それぞれ50%の株式を保有する。
このリチウム精製施設は、実際には米国や欧州連合(EU)の補助金を受けており、オーストリアで採掘されたリチウムを使用し、ドイツの大手自動車メーカーBMWに供給する計画となっている。