注目ポイント
2024年1月に行われる台湾・総統選で、第三勢力の台湾民衆党(民衆党)の柯文哲・前台北市長の勢いが増している。直近の世論調査で、与党・民主進歩党(民進党)、最大野党・中国国民党(国民党)の二大政党の候補を抜いてトップに躍り出た。民進党がセクハラ問題の対処に追われる中、若い世代を中心に柯氏の人気は高まっており、選挙戦の構図にも変化が生じている。
セクハラに揺れる民進党、対中対話も支持伸び悩む国民党
一方、民進党では5月末、党の元女性職員が協力会社の社員から業務中に体を触られ、党幹部に相談したものの、適切な対応が取られなかったことが発覚した。これをきっかけに、元職員らによるセクハラ被害の告発が相次ぎ、台湾版「#MeToo」運動の様相を呈している。
民進党執行部は6月2日、謝罪会見を開いて関係者を処分する方針を示したものの、深刻なイメージダウンは避けられないのが実情だ。頼氏も「民進党には現在、確かに逆風が吹いている。個々の事件をきちんと処理して、社会の了解と支持を取り付けたい」(『TVBS新聞網』6月18日)と述べるなど、防戦を強いられている。
最大のライバルである民進党の失点は、国民党にとっては得点を挙げるチャンスのはずだが、侯氏は支持を伸ばせていない。国民党の夏立言副主席は6月17日、中国福建省アモイで開かれた中台の交流イベント「海峡フォーラム」に出席し、中国の人民政治協商会議の王滬寧主席と会談した。夏氏は「92年合意」を尊重して交流を強化していく考えを明らかにしたが、柯氏はこれまで対中政策について明確に語っておらず、有権者にとっては分かりにくい状況となっているようだ。
対民衆党戦略問われる二大政党、駆け引き複雑に
台湾では民主化が進んだ1990年代以降、実質的に国民党から分かれた新党と親民党、李登輝元総統が主導した台湾団結連盟、中台サービス貿易協定に反対する学生らが立法院(国会)を占拠した「ひまわり運動」から生まれた時代力量など、次々と新政党が結成された。いずれも設立当初はブームを巻き起こし、「第三の選択肢」として華々しいスタートを切ったものの、次第に失速していき、二大政党体制を変えることはできなかった。

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民衆党は柯氏が総統選で弾みをつけ、同時に行われる立法委員(国会議員)選で現行5議席を上積みし、キャスチングボートを握るのが狙いとみられている。だが、このところの柯氏と民衆党の予想以上の躍進ぶりで、脇役にはとどまらない勢いになっており、民進党、国民党とも戦略の変更を求められている。両党とも民衆党対策にこれまで以上に力を入れなくてはならなくなる一方で、国民党は民衆党との連携を探っており、三つどもえの選挙戦は複雑な駆け引きが繰り広げられそうだ。
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