2023-06-19 政治・国際

関係改善模索で訪中のブリンケン米国務長官 台湾念頭に19日、米中外交トップが会談へ

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2021年1月のバイデン政権発足後、国務長官を含めた米閣僚で初めて訪中したブリンケン米国務長官は18日、北京で中国の秦剛国務委員兼外相と会談。19日には中国外交担当トップの王毅・共産党政治局員と会談する。米中関係の悪化に歯止めをかけ、台湾問題や偶発的衝突の回避に向けた対話を確保する狙いだが、米国の保守系メディアからは、「外交政策の観点からは無意味」という声も上がっている。

ブリンケン米国務長官は18日、北京で中国の秦剛国務委員兼外相と5時間半におよぶ会談に加え、約2時間のワーキングディナーで、焦点の台湾情勢など両国の利害が対立する安全保障分野について議論した。

国務省によると、ブリンケン氏は会談で、不測の事態を防止するため意思疎通を維持することの重要性を強調。複数の分野で懸念を伝達し、対話を続けるために秦氏をワシントンに招待し、日程を調整することで一致した。

中国外務省によると、秦氏は米中関係について「国交樹立以来、最悪だ」と指摘し「正常な軌道に戻さなければならない」と呼びかけた。両国は軍同士を含めた当局間の意思疎通の活性化を探る一方、世界経済の安定や気候変動といった分野では協力を模索した。

19日に会談する中国外交担当トップの王毅・共産党政治局員に対しては、台湾情勢も念頭に衝突回避の重要性を訴え、対話拡大を呼びかける。米関係者によると、2日間の訪中日程を終える19日夜までに習近平国家主席とも会談できるよう、調整を続けている。バイデン米大統領が意欲を示す習氏との会談実現につなげる狙いもあるとみられる。

米中両外相は今回の会談の議題を14日の電話会談で事前に整理したが、双方の立場の溝は多分野で深く、歩み寄りが実現する可能性については悲観的な見方が強い。もともとブリンケン氏は2月に訪中を予定していたが、中国の偵察気球が米上空に飛来した問題を受け、直前で延期された。その直後、ブリンケン氏は王氏とドイツ・ミュンヘンで会談し、偵察気球問題をめぐり非難の応酬となった。

今回の訪中を受け、米保守系メディア大手FOXニュースは、元米国防情報局幹部レベッカ・コフラー氏の見解として、「外交政策の観点からは無意味」との主張を伝えた。

同氏は、「ワシントンは訪問が無意味であることを認識している。なぜなら、訪中前の会見で米当局者らは、悪化している米中関係の打開には期待していないことを明らかにしたからだ」と指摘した。偵察気球問題に加え、ニューヨークなどの中国政府の出先機関とされる〝秘密警察署〟や、〝米国の裏庭〟キューバに中国当局のスパイ施設の存在が明るみに出たことで、米国の中国に対する不信感は一層深まっているからだ。

秦外相は訪問前の14日の電話会談で、「米国は中国に内政干渉し、競争の名のもと、中国の主権的安全保障と発展の利益を損なうことをやめるべきだ」とブリンケン氏に警告した。

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