注目ポイント
2022年2月のウクライナ侵攻後、ロシアに対する欧米の制裁措置が世界の石油取引に激震を与えている。
原油の輸入禁止と価格上限を規定する規則は、順守することも、それを守らせることも困難だ。スイスの場合は独自の制裁機関がない。そのため、価格上限と制裁パッケージの両方に違反した場合の報告は、州、銀行、または連邦機関に委ねられている。
スイス連邦経済省経済管轄庁(SECO)は、コンプライアンスの監視はしていないと公言している。スイス連邦検察庁(BA/MPC)は、制裁違反の捜査はSECOから要請があった場合に限り可能だとするが、要請が実際あったかどうかについてはコメントを避けた。また、スイスの制裁実施に関し、関連性がありながら異なる司法管轄地域で事業を行う企業の間に、どのような線引きがされているのかについても言及しなかった。
SEC0のヘレネ・ブドリガー局長は、3月に行われたスイスのテレビ局とのインタビューで「我々は、スイスで活動する企業がスイスの法律を尊重するという事実に頼らざるを得ない」と発言した。「私たちは警察でも検察官でもない」他のサイトへ
スイスは何十年にわたり、国内で事業を行う個人の機密を保持することに誇りを持ってきた。だがロシアのウクライナ侵攻以降、その慣習に陰りが見え始めている。ウクライナ政府関係者や米国の議員を始め、多くのNGOは、スイス当局がより積極的に制裁を実施すべきだと訴える。
パブリック・アイのデュパルク氏は「ウクライナ戦争は、汚職、マネーロンダリング(資金洗浄)との闘いや制裁の実施など、スイスが持つあらゆる欠点を浮き彫りにした」と話した。
編集:Nerys Avery、英語からの翻訳:井部多槙
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