2023-06-17 経済

スイスの商社とロシア産石油を巡る不透明な世界とのつながり

注目ポイント

2022年2月のウクライナ侵攻後、ロシアに対する欧米の制裁措置が世界の石油取引に激震を与えている。

パラマウントSAは、違法なことは何らしていないと主張する。swissinfo.chの取材に対する声明で、パラマウントDMCCは自社の傘下にはあるが独立した法人であり、アラブ首長国連邦とスイスの法律に従う義務があると語った。

パラマウントSAは「我々は、ロシア産原油の価格上限規則やその他の制裁に違反したとのいかなる主張も力強く否定する」とメールで回答。「価格上限が導入されるかなり前の2022年9月、ロシア原産の原油・石油製品に関わる全取引を停止した。弊社の事業活動は常に、制裁措置や全ての一般法に厳格に則って行われた」とした。

パブリック・アイの報告書は、サンライズの活動にも焦点を当てている。サンライズは2022年9月、コズミノから4隻分に相当する40万トン近い原油を積載した。2020年にはジュネーブで、サンライズ・トレードSAという企業がスイスの商業登記簿に登録された。同社の簡素なウェブサイトによれば、この会社は原油、精製石油製品、石油化学製品を世界的およびロシア全域で取引している。2022年には香港で、サンライズX・トレーディングという名前の企業が登記された。当局による正式な調査が行われていないため、両者の明確な関連性を立証することは難しい。swissinfo.chがこのスイス企業に取材を試みたが、実現しなかった。

パブリック・アイのアガテ・デュパルク研究員は「スイスではいまだに、企業の実質的経営者を記載した公開登記簿が存在しない。捜査が始まって初めて当局がこのデータにアクセスできる。それが真の問題だ」と話す。

未だ出回るロシア産石油

ロシア産原油は今もなお、しかも意図的に世界市場に出回っている。欧米による制裁の抜け穴によって、一度精製された原油は世界のどこにでも出荷できる。しかも、一度精製されてしまえば、罰則なしで欧州に再輸入できる。これは制裁に署名していない国の製油所にとって大きなビジネスチャンスをもたらす。グローバル・ウィットネスによると、インドは今年1月、前年比の約20倍に上る5700万バレル以上のロシア産原油を輸入した。ケプラーがデータを分析したところ、2022年にトルコがロシアから輸入した原油は1億4300万バレルだった。これは、2021年から50%増加したことになる。

ロスナー氏は「この抜け穴によって、ロシア産原油が第三国の製油所に運ばれ、ディーゼルやガソリンといった他の製品に形を変えて欧州に入ってくる」と説明する。グローバル・ウィットネスは、ほぼロシア産原油だけを受け入れるトルコのある製油所を例に挙げ、ここで作られたディーゼル燃料がビトルを含む石油商社大手によってEUに輸出されていると指摘した。

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