2023-06-17 経済

スイスの商社とロシア産石油を巡る不透明な世界とのつながり

注目ポイント

2022年2月のウクライナ侵攻後、ロシアに対する欧米の制裁措置が世界の石油取引に激震を与えている。

ロスナー氏は、ロシアのコズミノ港で取引される「エスポ原油」に焦点を当て調査した。この原油が、昨年12月にG7が発動した60ドルの価格上限を上回り取引されていたからだ。商品データベースを扱う企業のケプラーによると、今年1月と2月、エスポ原油の取引商社の最大手の1つで、明らかに価格上限に違反していたのがパラマウントSAだった。

パブリック・アイは2022年4月、この不可解な商社他のサイトへの素性を公表した。今年3月に公表されたグローバル・ウィットネスとFTによる個々の調査では、2022年6月、ロシアの石油事業がパラマウントSAからドバイのパラマウントDMCCに移行したようだと報告されている。

ロスナー氏は「双方の企業間に全く関係性がないという主張は信じがたい」と話す。「両社の言い分は、双方が独立して運営しており、パラマウントSAの創業者はパラマウントDMCCの直接的な経営権を保有していないというものだ。だが彼が現在ドバイに住んでいるとされる報道や、以前パラマウントSAが扱っていたコズミノと中国間の全取引を、パラマウントDMCCが引き継いでいるという事実がある」

ロスナー氏は、この2企業が国際的な制裁や価格上限に違反したとは考えていない。グローバル・ウィットネスの報告書は、このドバイ拠点の事業体が欧州の従業員を持たず、欧州で事業を行わず、また欧州の事業体の支配下にないといった場合、パラマウントSAが価格上限の法域外で活動することは可能だと指摘している。こうした現状によって、この2企業の所有権と支配権を明確にすることがさらに重要になっている。

法律の抜け穴

スイスのメディア法は非常に厳しく、swissinfo.chが疑わしい活動に関与しているとみられる人物の名前を公表できるのは、個人の利益を公共の利益が上回る場合、あるいは法律違反が確認された場合に限られる。ジュネーブの公文書によればパラマウントSAを管理しているのはスイス人で、フィナンシャルタイムズは別のスイス人がパラマウントDMCCのディレクターとしてドバイの企業記録に記載されていると報じているが、swissinfo.chはその名前を出すことができない。

欧州や米国の法律とは異なり、スイスの制裁法は国外に住む国民には適用されない。この抜け穴について、パブリック・アイは「グローバルに活動する商社は組織構造を少し変えるだけで、制裁を回避できてしまう」と指摘する。パブリック・アイは3月に発表した「Russian Oil in Switzerland: A Fake Farewell?他のサイトへ(仮訳:スイスのロシア産原油 偽りの別れ)」と題した報告書で、パラマウントSAとパラマウントDMCCに言及している。

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