2023-06-17 経済

スイスの商社とロシア産石油を巡る不透明な世界とのつながり

注目ポイント

2022年2月のウクライナ侵攻後、ロシアに対する欧米の制裁措置が世界の石油取引に激震を与えている。

トラフィグラは2022年7月、ロシアの国営石油会社ロスネフチが主導する北極圏の石油・ガス鉱床開発プロジェクト「ヴォストークオイル」に係る株式10%を売却し、物議を醸した。ビトルも同年12月、保有株式を売却した。英経済紙フィナンシャル・タイムズ他のサイトへは、ウクライナ侵攻の1週間前に香港で登記されたノルド・アクシス・リミテッドという小さな会社が両株式を買い取ったと報じた。

これらの大手商社が残した穴は、主にロシア・中国の国有企業や、欧米の対ロシア制裁対象外にあり透明性の低い国・地域で登録された小企業が埋めた。NGOや石油業界トップは、結果的に石油市場はさらに細分化され、不透明化が進んだという。

ビトルのハーディCEOは「一般的に考えれば、欧米企業であれば持ち合わせていた理解度と透明度の高さがこれらの小企業に欠けていることは、全体としては芳しくない」と話す。

FT、パブリック・アイ、グローバル・ウィットネスは、いわゆる「ポップアップ」の台頭とスイスの商社との関係を調査した。その中でも、スイスと国外に瓜二つの会社がある2企業、つまりパラマウントとサンライズが特に注目された。これらの企業はベールに包まれ、所有権の所在や、制裁・価格上限の違反の有無を確認することはほぼ不可能だ。

グローバル・ウィットネスのシニアキャンペーン担当者であるマイ・ロスナー氏は「問題は、これらの企業の背後に誰がいるのか分からないことだ。ウェブサイトすらないことがままあり、連絡手段もない」と話す。「これらの企業は非常に不透明だ。誰がコントロールしているかも分からない」

これらの新興商社が拠点を置く国や地域では、ほとんど情報開示が要求されない。例えばドバイでは、非上場会社に取締役や株主の名前を開示する義務はない。アラブ首長国連邦に拠点を置くパラマウントエネルギー・コモディティーズDMCC(パラマウントDMCC)は、スイス拠点のパラマウントエネルギー・コモディティーズSA(パラマウントSA)の石油取引フローを模倣した商社であることから注目を浴びた。企業名と取引形態が似ているため関心が集まり、国際的な制裁を課すことが課題として浮上した。

ロスナー氏は、商社が原油価格上限他のサイトへの1バレル60ドルを遵守しているか調査する中、パラマウントエネルギーの存在を知った。同氏は「原油は、クレムリン(ロシア政府)の軍資金に不可欠な資源だ」と断言した。

不透明なつながり

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