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莫言は、初めてAI(人工知能)を使って文章を書いたと公に認めたノーベル賞作家となった。 彼は、友人の作家・余華氏に贈る祝辞を何日も書けなかったので、大学院生のサポートでChatGPTを使ったと冗談混じりに語った。 ChatGPTに「活きる」「抜歯」「文城」などのキーワードを入力すると、瞬く間に1千字余りのシェイクスピア風の祝辞が作成されたという。
中国初のノーベル文学賞作家・莫言氏は、文学イベントで、ChatGPTを使って祝辞を書いたと明かし、聴衆を驚かせた。
莫言氏は16日、文芸誌「収穫」の65周年記念祝典に出席し、小説『文城』で「収穫」の2021年長編小説のランキング1位に選ばれた友人作家の余華氏に賞を授与した。莫言氏は授賞式で、余華氏への祝辞を数日間考えても書けず、博士課程で学ぶ大学院生の力を借り、生成AIのChatGPTに「活きる」「抜歯」「文城」というキーワードを入力したところ、瞬く間にシェイクピア風の1千字余りの祝辞を書いてくれたとユーモアたっぷりに語った。
「活きる」と「文城」はいずれも余華氏の代表作だが、「抜歯」は余華氏が元歯科医であったことを指しているようだ。
香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は、ノーベル賞受賞者の中で人工知能(AI)を使って文章を書いたと公式に認めたのは莫言が初めてだと指摘したが、授賞式で披露された余華氏への祝辞が、果たしてChatGPTで作成したものかどうかは不明だとした。
莫言氏はその後の質疑応答では、自分の小説はすべて自分で書き、どの作品にも自分の体験が反映されていると述べ、文章を書く能力を授かったので、これからも書き続けると語った。
今年68歳になる莫言氏は、2012年に中国籍の作家として初めてノーベル文学賞を受賞した重要な作家だ。代表作「紅い高粱」は、張芸謀監督により映画化され、1988年のベルリン国際祭で金熊賞を受賞した。
莫言氏と余華氏は、共に文化大革命後に新しいテーマとスタイルを模索した新世代の中国人作家で、文革が人々に与えた巨大な精神的、物質的なダメージと、国民の将来に対する深い洞察を表現することを目指す「傷痕文学」という文学潮流の作家に連なっているとされる。
中国政府、ChatGPTを禁止 ネットユーザーは莫言氏がトラブルに巻き込まれることを懸念
だが現在、中国はマイクロソフトも出資するAIロボットプログラム「ChatGPT」の使用を禁止している。中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では、莫言氏やサポートの大学院生がVPNを使って接続制限を迂回していることが発覚し、処罰されるのではないかと心配する声もあがっている。 「Nikkei Asia」は今年2月、中国政府が国内IT企業に対し、ユーザーに未検閲の情報を提供するのを防ぐため、ChatGPTを使用したサービスを提供しないよう要請したと報じた。