注目ポイント
今年2月、米国本土上空などに中国の無人偵察気球が複数飛来したことに加え、6月8日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道を機に、米本土に近いキューバを拠点とする中国のスパイ活動活発化が物議をかもすなか、日本近海においても光ファイバー海底ケーブルに中国製盗聴装置が仕掛けられていたことが、このほど通信会社関係者らの証言でわかった。中国が近年、対外諜報活動を世界的規模で展開、強化してきた一例として注目されそうだ。
ただ、各国の諜報機関が海底ケーブルを狙って盗聴し、情報収集するのは電話線の時代から行われてきた経緯があり、その応酬は米ソ冷戦時代から現代に至るまで変わりはない。最近では米国の国家安全保障局 (NSA)と、同中央情報局 (CIA) の元局員で、NSAによる国際的監視網(PRISM)の実在を告発してロシアに亡命したエドワード・スノーデンが、米国政府による海底ケーブルを使った情報収集活動も暴露している。この海底ケーブル事業には中国のファーウェイ・マリーンなども参入していた。

活発化する中国の対外諜報活動
その中国の対米国諜報活動に関しては今年2月、複数の無人偵察気球が米国やカナダ上空に飛来し、米軍機が撃墜した。中国側は気象観測目的の民間の気球だと主張したが、撃墜後に調査した米国は、複数のアンテナや、センサーを動かすために必要な電力を供給するためのソーラーパネルが搭載されていたことを確認し、米政府高官は「携帯電話などの位置を特定し、データを収集する能力がある」などと指摘している。
また今年6月8日には米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙が米当局者の話として、中国が、米国本土の目の前に位置するキューバと、キューバ領内にスパイ施設を設置する計画で大筋合意した、と報道。その後、米政府高官が、キューバを拠点とする中国のスパイ活動展開は以前からの動向で、2019年にも情報収集施設を増強していた、と明らかにするなど、物議をかもしている。

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このうち、偵察気球に関しては日本の防衛省も米国の事例を受けて今年2月、2019年11月に鹿児島県薩摩川内市、20年6月に仙台市、21年9月に青森県八戸市の上空でそれぞれ確認された気球に関し、中国が飛行させた無人偵察気球であると強く推定される、と発表した。その場合は領空侵犯に該当するとして、遅ればせながら外交ルートを通じ、中国政府に事実関係の確認を求め、領空侵犯は断じて受け入れられない、と申し入れている。

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今回新たな証言から2018年ごろの沖縄近海における光ファイバー海底ケーブルからの中国製盗聴設備の発見を指摘した「This week on OKINAWA」誌は、諜報、防諜に詳しい元陸上自衛官のコメントとして、「軍事上の絶対的な機密に関する通信には衛星が使用されているが、それでも中国が民間やマスコミなどの通信を傍受することは脅威のひとつだ」との指摘も行っている。