2023-06-16 政治・国際

沖縄近海の光ファイバー海底ケーブルに中国製盗聴装置 在沖縄米軍向け情報誌が指摘

© 光ファイバー海底ケーブルの増幅装置(米軍周辺者提供)

注目ポイント

今年2月、米国本土上空などに中国の無人偵察気球が複数飛来したことに加え、6月8日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道を機に、米本土に近いキューバを拠点とする中国のスパイ活動活発化が物議をかもすなか、日本近海においても光ファイバー海底ケーブルに中国製盗聴装置が仕掛けられていたことが、このほど通信会社関係者らの証言でわかった。中国が近年、対外諜報活動を世界的規模で展開、強化してきた一例として注目されそうだ。

中国製盗聴装置発見は複数回か?

沖縄近海の光ファイバー海底ケーブルから中国製盗聴装置が発見されたことは、沖縄で1955年から発行されている在沖縄米軍を対象とした情報誌「This week on OKINAWA」6月4日号が、日本の一部通信会社関係者の証言をもとに報じた。米軍周辺者らによると、同情報には在沖縄米軍も強い関心を示しているという。

同誌によると、今回海底ケーブルに中国製盗聴装置が仕掛けられていたことが指摘されたのは「約5年前」とされており、2018年と思われる。

同誌に証言した日本の大手通信会社の技術担当者は、「総務省の職員から海底ケーブルに設置された中国製盗聴装置のサンプル写真を見せられたうえで、海底ケーブルの検査を強化するよう要請があった」と説明している。

これを裏付けるかのように、ある総務省の元職員も、「自分は総合通信局に所属していなかったため、中国の盗聴装置自体の写真は見たことがなかったが、海底ケーブルに中国の盗聴装置が仕掛けられた事実は知っていた」と証言。しかも同元職員は、仕掛けられたことが一度だけではなかった、ということも示唆した。

沖縄近海の光ファイバー海底ケーブルから中国製盗聴装置の発見を報じた「This week on OKINAWA」6月4日号(米軍周辺者提供)

光信号増幅装置から漏れる電磁波

総務省の要請にもとづいてこの大手通信会社は2018年ごろ、海底ケーブルの総点検を実施し、盗聴設備を発見するに至った。

通常、光ファイバーケーブルを通じて光信号を盗聴することは技術的に困難だとされている。しかし、海底ケーブルの場合、一定区間ごとに光信号の増幅装置が設置されており、これが一種のウイークポイントとなっており、発見された中国製盗聴装置もこの増幅装置を標的として仕掛けられていたという。

技術担当者は、「(盗聴装置を設置した中国は)この増幅装置から漏れる電磁波を盗聴し、情報を解析していたと思われる」と指摘。 総点検に際して総務省から見せられたサンプル写真には、増幅装置に取り付けられた小型盗聴装置も写っていたという。

© 海底光通信ケーブルの増幅装置(米軍周辺者提供)

光ファイバー海底ケーブルの増幅装置(米軍周辺者提供)

超重要インフラ・光ファイバー海底ケーブル

沖縄における主要な通信網としては、NTTをはじめ、AU、KDDI、AT&T、さらに米軍による光ファイバー海底ケーブルがあげられ、沖縄ではこれによって日本本土をはじめ、他のアジア諸国・地域、グアム、ハワイ、オーストラリアなどと情報通信を行っている。

現代社会において最も重要な社会基盤のひとつとなったインターネット網だが、現時点で大陸間においてこれをつなぐ主柱は衛星ではなく、この光ファイバー海底ケーブルこそが大部分を担っているのが実情だ。

事実、海底ケーブルメーカー大手のひとつNECは、その公式サイトに光海底ケーブルシステムの概要も掲載しており、「国際通信などの大陸間を結ぶ光海底ケーブル通信システム」に関しては、「深海8,000mの水圧に耐え、1万km以上の伝送が可能です。通信容量が非常に大きく、遅延も少ないため、現在では衛星通信に代わり国際通信の99%を光海底ケーブルが担っています」と説明。「これら海底機器は、深海で25年もの長期間にわたり、正常に稼働し続けることが絶対条件となっています」とインフラとしての重要性を強調している。

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