2023-06-13 政治・国際

【谷井隆夫の台湾に進学しよう!】④ 新展開!台湾進学ゼミのノウハウ生かし台湾人対象日本語教室も開講

© 日本語教室で学ぶ台湾人シニアとゼミ生との交流=2023年5月、大阪市阿倍野区の台湾進学ゼミ(筆者撮影)

注目ポイント

「日本の高校生に台湾の大学への進学を提案したい」との信念で元大阪府立高校長の筆者が、「台湾進学ゼミ」(大阪市阿倍野区)を立ち上げたのは2018年。順風満帆の船出もつかの間、コロナ禍に突入し、苦心の末にオンラインレッスンを充実させたものの、今度はロシアのウクライナ侵攻や米中関係の緊張激化に伴う国際情勢の変化が、日本の若者の海外留学熱に水を差す事態に。第4回は、台湾人シニアのための日本語教室も開講するというコペルニクス的着想を実現させた新展開の日々を振り返る。

世界情勢不安で海外留学熱に水

コロナ禍に翻弄された3年間の後半には、もう一つ別の逆風が起こった。それは、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻、そして米中関係の緊張であった。世界情勢の不安定化によって、日本の高校生の海外留学志向が大きく低下したのである。

立ち上げから3年間、台湾進学ゼミはウェブによる広報活動に加え、高校での講演活動、時には体験授業やビラ配りなどで、台湾留学のメリットを広く市民のみなさんにお伝えしていた。その結果、順調に見学の申込みがあり、入塾者も増えていっていた。

日本語教室後に四天王寺境内を散策する台湾人シニアら=2023年6月、大阪市天王寺区(筆者撮影)

その矢先の世界情勢の不安定化は、流れに水を差すのに充分なインパクトがあった。

見学申込み者こそ数は横ばいだったものの、見学を終えた高校生が、入ゼミを見合わせる割合が増えていった。台湾に限らず、海外留学全体の規模が縮小した期間ではあったが。

ある世代の若者の海外学習経験が顕著に低下するというのは、とても残念なことだった。やがて、2022年末にはコロナ禍も落ち着く気配が見えてきた。

世界情勢は落ち着いたとは言えなかったが、コロナ禍による出入国規制が緩和されてからは、人の流れが少しずつ回復傾向にあった。

 

「日本語習いたい」と台湾人から要望

そんな状況の中、台湾から日本へ語学の学習に来たいという人からの問い合せが入るようになった。海外旅行を我慢していたのは日本人だけではなく、台湾の人たちも同じだったのである。

私のゼミで日本語を学びたいという問合せをしてくれたのは、主に台湾人シニアの方々だった。日本で1か月滞在し、平日週5日間、午前中3時間の日本語授業を受講し、平日の午後と週末は、観光や買物をしたいというご希望の方々だった。

うまい具合に私には、学校勤務時代に海外で2年間日本語を教えた経験があった。

30代のなかばに、文科省の海外派遣プログラムに選ばれて、内地留学という形によって東京外国語大学で日本語教員の資格を取った。その後、オーストラリアの高校と大学で、2年間日本語教員を務めたのである。

この経験と自信を根拠に、台湾人シニアのみなさんの問い合せに前向きな返事をすることができた。

開講した日本語教室初級コースで学ぶ台湾人シニアら=2023年5月、大阪市阿倍野区の台湾進学ゼミ(筆者撮影)

世界の国々には、日本が大好きな人たちがいて、その中の一定数は日本語を勉強し、日本語検定を受けたり、日本の大学に留学に来てくれたりする。日本国内には、若者を対象とした、そのような日本学校はたくさんある。

しかし、今回問い合せをしてくれた台湾人シニアのみなさんのご希望は、「じっくり日本語を習いたい」というものだった。日本語検定での合格をめざしているわけではない、日本の大学に入学したいのでもない、ただ「日本語を少しでも上達させて、日本滞在を楽しみたい」という目的を持っていた。

日本語教室での受講後にスーパーで買い物を楽しむ台湾人シニアら=2023年5月、大阪市阿倍野区(筆者撮影)
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