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ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、「ウクライナで反攻と防御の軍事行動が取られている」と述べ、ロシアに対する一連の大規模な反転攻勢を開始したことを初めて認めた。11日には、ロシア軍に占領されたウクライナ南東部の集落を解放したとウクライナ軍当局が発表。反攻開始から初の奪還とみられ、戦況が新たな局面を迎えていることを示した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、首都キーウを電撃訪問したカナダのトルドー首相との共同記者会見で、「ウクライナで反攻と防御の軍事行動が取られている」と表明し、ロシアへの大規模な反転攻勢を開始したことを初めて認めた。これまでは、ロシア側に手の内を明かさないため、反転攻勢の時期についてはあいまいな発言をしてきた。
だが、西側やロシアメディアはすでに一連の反攻が開始されたと報じており、事後追認した形だ。ゼレンスキー氏は作戦に自信を示し、「私は毎日、ザルジニー軍総司令官や、さまざまな前線の司令官らと連絡を取っているが、みな楽観的だ。プーチン(ロシア大統領)にそう伝えてほしい」と共同会見でそう語った。
ゼレンスキー氏は一方で「どの段階にあるかは明言しない」とも述べ、作戦の詳細には言及しなかった。プーチン氏が9日、反攻が「間違いなく始まった」と述べ、撃退に自信を見せたが、これに反論した形だ。
共同記者会見でトルドー首相は、欧米諸国による戦闘機供与や運用に向けた「戦闘機連合」に参加すると表明。追加の軍事支援も発表した。
先月29日のビデオ声明では、ゼレンスキー氏は反攻の時期に関して「決定が下された」とだけ言及。一方、ロシアのショイグ国防相は反攻が6月4日から既に始まっているとし、西側から供与され前線に投入されたドイツ製の最新鋭戦車レオパルトを破壊するなど、撃退の成功を連日発表している。
ワシントンのロシア大使館は先週、レオパルト戦車8台をロシア軍が「殲滅(せんめつ)」したとツイートし、ロシア国防省はその翌日、ロシアのメッセージアプリ「テレグラム」で「レオパルト戦車を含む外国の装甲車両を破壊する映像」を公開した。
この映像はロシア国営放送局やニュースサイトで大々的に放映され、Ka52アリガートル攻撃ヘリの熱画像システムから記録されたものだとした。映像では、ヘリコプターが誘導ミサイルを発射し、車両が爆発する前に、いくつかの車両の黒いシルエットが確認された。
ところが、ロシア側の主張をAP通信は検証し、視覚分析した結果、ロシアが証拠として公開した粒子の粗い白黒の射撃照準映像は、実際は農業用トラクターの破壊を記録したものだったことが判明した。それによると、夜間に録画された映像の車両は、畑に止められた大型の固定農業機械で、具体的にはトウモロコシと小麦の収穫に使用される自走式噴霧器と2台のコンバインだった。