注目ポイント
台湾には300を超える夜市がある。地図を広げると3分の2以上の町村に1つ以上の夜市があることになり、その密度の高さは、台湾人の食に対する情熱を表している。 夜市が好きなのは台湾人だけでなく、外国人観光客も必ず訪れる場所となっている。ワンコインで食べられるサツマイモ団子や臭豆腐、豆花、素麺や春巻きなどのB級グルメがあふれかえる。暑い夏も、日が暮れれば涼しい風が吹き、ラフな服装にサンダル履きで歩きながら、アジアらしい人ごみの中を歩くことができる。夜市は年中無休のカーニバルのようでもあり、台湾で最も素朴な庶民生活の縮図なのである。
数々の屋台を前にすると、どの料理も食べたくなるが、馬継康は夜市が打ち出す「小吃宴」を提案する。
「台北の胃袋」と呼ばれる寧夏夜市の「千歳宴」では、一度に20種余りの屋台料理が食べられる。うずら卵の串、蚵仔煎、大腸包小腸、臭豆腐、魯肉飯(ルーローファン)などがコースで出され、大勢で少しずつ食べられる。
千歳宴は小規模なコース料理と言え、おなかが一杯になる。台湾の「美食の都」である台南にも類似したコース料理があり、食事の環境は良く、台南で有名な蝦巻(エビのすり身の揚げ物)、担仔麺(タンツーメン)、棺材板(シチュー入りの食パン)、杏仁豆花などが食べられる。自分たちで夜市を歩き、一軒ずつ食べていくと時間がかかるが、小吃宴なら一つの場所で一度にいろいろと食べられるのである。
旅のスケジュールが限られている中、夜市に行きたい場合は、北部なら基隆の廟口夜市を訪れたい。ここでは天婦羅(さつまあげ)や鶏絲飯(ほぐした鶏肉をのせたご飯)、螃蟹羹(カニ入りとろみスープ)、鼎辺趖(米粉麺入りスープ)などが食べられる。また台北の饒河街夜市にはミシュランガイドが推薦する臭豆腐と胡椒餅があり、士林夜市には十全薬膳大排骨(薬膳スープ)や、顔より大きいフライドチキンがある。
中部の逢甲夜市は「夜市の中の夜市」と呼ばれている。台湾中の夜市の新しいアイディアの多くはここから生まれており、逢甲夜市のグルメを見逃すことはできない。
このほかに、台北の通化夜市の氷火湯圓(白玉氷)や地瓜球(サツマイモ団子)、炸鶏翅(手羽先の唐揚げ)、嘉義の文化路夜市の沙鍋魚頭(魚の頭が入った鍋)、火鶏肉飯(ジーローファン)、宜蘭羅東夜市の葱餅(ネギ入りお焼き)や炸皮蛋(揚げピータン)なども見逃せない。

夜市で地元の雰囲気を楽しむ
「子供の頃は鳳山に住んでいて、金曜日の夜に開かれる流動夜市が楽しみでした」と話す馬継康は子供のような笑顔を見せる。翌日は学校も休みなので、夜市へ行ってパチンコをしたり、乗り物に乗ったりして思い切り遊んだそうだ。豪華なものは何もないが、観光客にも幸せを感じさせてくれる場所なのである。
昨今は都市の発展によって夜市の盛衰も速く、突然人気が出たり、急に廃れてなくなってしまうものもあるが、長年にわたって常ににぎわい続けている夜市もある。
夜市で評判になった屋台料理を五つ星ホテルのレストランが取り入れることもあり、シェフが工夫を凝らし、腕を振るう。例えば肉圓(サツマイモ粉の皮で肉餡を包んで蒸したもの)にアワビや貝柱を入れて高級料理にしたものもある。だが、馬継康は、これでは屋台料理の特色と意義が失われてしまうと考える。