2023-06-11 観光

屋台料理をほおばり 庶民の暮らしを肌で感じる ―― 台湾の夜市を歩く 

© 林格立撮影

注目ポイント

台湾には300を超える夜市がある。地図を広げると3分の2以上の町村に1つ以上の夜市があることになり、その密度の高さは、台湾人の食に対する情熱を表している。 夜市が好きなのは台湾人だけでなく、外国人観光客も必ず訪れる場所となっている。ワンコインで食べられるサツマイモ団子や臭豆腐、豆花、素麺や春巻きなどのB級グルメがあふれかえる。暑い夏も、日が暮れれば涼しい風が吹き、ラフな服装にサンダル履きで歩きながら、アジアらしい人ごみの中を歩くことができる。夜市は年中無休のカーニバルのようでもあり、台湾で最も素朴な庶民生活の縮図なのである。

アジア各国に夜市はあるが、台湾の夜市はなぜこれほど人気があるのだろう。余舜徳によると、台湾の夜市は雑然とした中に文化的秩序があり、だからこそ外国人観光客にも人気があるのだと考えられる。「しかも台湾の夜市は安全で、食も衛生的で、管理がなされています。台湾の夜市では安心して歩きながら異国情緒を楽しむことができるのです」と言う。

台北の華西街夜市は外国人観光客に最も人気のある観光夜市の一つで、山海の珍味が味わえる

 

庶民の最高の宴

特色ある食文化は夜市の最大の魅力である。台湾は、食文化の面で北東アジアと東南アジアが交わる地点に位置し、そのためあらゆる食材や料理が集まっていると余舜徳は指摘する。北東アジアの料理、東南アジアの料理、さらに中国各省の料理、そして160万人の移民がもたらしたさまざまな料理が楽しめる。

台湾独自のB級グルメは創意に満ちている。余舜徳が例に挙げるのは、夜市ステーキ、蚵仔煎(牡蠣オムレツ)、大鶏排(巨大フライドチキン)、塩酥鶏(鶏やさまざまな食材の唐揚げ)、大餅包小餅(砕いた揚げパンを薄皮で包んだもの)、大腸包小腸(もち米の腸詰に豚の腸詰を挟んだもの)などだ。「夜市の屋台料理にイノベーションを見て取ることができます」と言う。

臭豆腐、タピオカミルクティー、豆花、蚵仔麺線(とろみスープの素麺)、そして火であぶった腸詰やスルメなど、それぞれに物語がある。

台湾師範大学の講師で世界遺産ガイドの馬継康は、海外からの観光客を案内する時に、これら食の背景の物語を話すことにしている。「台南の料理は甘いものが多いですが、それは昔は砂糖が貴重でお金持ちしか食べられなかったからです」鄭氏王朝の時代、宮中の料理人が独立して外で商売を始める時、「庶民の料理と宮中の料理の違いは砂糖が入っているかどうかでした。甘味は富貴の味だったのです」

どの夜市にもある蚵仔煎は、「国姓爺」鄭成功と関係がある。馬継康によると、鄭成功が台湾に来てゼーランジャ城を攻撃した時、米が不足していた。端午節に兵士たちに十分に食べさせるため、台湾のサツマイモ粉で生地を作り、海辺で捕れる牡蠣ともやしを加えてチマキの代用品にした。これが煎䭔と呼ばれ、現在の蚵仔煎の原型となったのだという。また、台南の意麺という麺は、生地にアヒルの卵を加えており、麺を延ばす時に「イ」という音がすることから名づけられた。このほかに、台湾語の「幼(細いという意味)麺」が変化したものだという説もある。馬継康が語る物語に、外国人観光客は楽しそうに耳を傾け、屋台料理の味わいも増す。

地元の人が集まる南機場夜市は、よく整備されていて歩きやすく、おいしいものも多い。

 

必ず食べたい夜市の料理

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