2023-06-11 経済

サイバー酔いしない仮想現実 研究はどこまで進んだ?

注目ポイント

巨額の利益が期待される技術分野がある。メタバースだ。だが、この仮想世界の中で動くのに必要なVRゴーグルを着けると気分が悪くなる人が後を絶たない。この問題にスイスの研究者が取り組んでいる。

サイバー酔いの研究がどの程度までチューリヒで行われているのかという質問に対し、メタは詳細を明らかにしなかった。同社は11月の1万1千人に続き3月にも全世界で1万人の人員削減他のサイトへを発表しているが、そこにスイス拠点が含まれるかどうかも公表していない。

経済界は仮想のパラレルワールドであるメタバースに大きな期待を寄せる。仮想市場が自分たちの売り上げを押し上げてくれるという期待があるからだ。

Eコマースの他に、ゲームやエンターテインメント、教育、健康、芸術分野への応用も考えられる。

何が改良できるのか?

未来像はここまでにしておこう。目標は、装着していることを忘れるほど軽く、ユーザーの気分が悪くならないVRゴーグルを開発することだ。メタなどからの資金援助を受けるディデク氏の研究チームは「問題はゴーグル内でいかに効率よく画像を生成し、最高の品質を得られるかだ」と指摘する。

同氏によると、アプリケーションの設計をインテリジェントにすることでサイバー酔いが防げる。既に触れた「目と内耳のアンバランス」の他に、画像解像度が低すぎる、画面上へのマッピングが遅れる(レイテンシー)、リフレッシュ速度が遅いなど、ほとんどが技術的な原因によるものだからだ。

同氏が示したVRゴーグルのアプリケーション改良例は、一言で言うといわゆる「中心窩適応レンダリング」技術だ。人間の視野はかなり限られているので、視野の中心部だけが、つまり目が見ているところだけが鮮明であれば十分であることを利用したものだという。視野の中心部はゴーグルがアイトラッキングで検出する。

同氏は、画像辺縁部のデータを減らし、画像中心部のデータを増やすことで解像度を上げ、より快適な視覚体験が実現できると解説する。

世界中で研究されているその他のアプリケーションには、コンピュータの高性能化の他に、没入感を低減させる頚部バイブレータ、VRゴーグルの光学的安定化システムやアイトラッキングの改良などがある。

神経科学分野でもさまざまな研究他のサイトへが進められ、男性に比べて女性の方がなぜサイバー酔いしやすいのかが明らかになっている。女性の瞳孔間距離が狭いことが原因だ。VRゴーグルの瞳孔間距離を調整すると男女差はなくなる。

連邦工科大学チューリヒ校のホルツ氏は、仮想空間の吐き気防止法は他にもあるという。「サイバー酔いを防ぐ最も効果的な方法の1つは休憩を挟むことだ」。つまりユーザーは刺激の強い仮想世界から時々抜け出して現実に戻り、休養すればいいのだ。

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