2023-06-08 経済

スイスの中央銀行で権力を握るのは誰か?

注目ポイント

スイスの政治において最も影響力ある組織の1つがスイス国立銀行(中央銀行、SNB)だ。そこでは誰が意思決定を行うのか。他の主要中央銀行とはどんな点が違うのか。

スイス国立銀行(SNB、中央銀行)で金融政策を決定する3人の理事。左からマルティン・シュレーゲル、トーマス・ジョルダン(総裁)、アンドレア・メクラーの各氏 © Keystone / Michael Buholzer

SNBが金融市場に抱える資産は9千億フランを超え、その差配はスイスフランの購買力を決定づける。経営危機に陥ったクレディ・スイスに対しては最大1千億フラン(約15兆円)の流動性供給を保証する。他のサイトへ

金融政策の決定権は誰に?

SNBで金融政策を決定する他のサイトへのは、正副総裁に理事1人を加えた3名で構成する理事会だ。トーマス・ジョルダン氏が現総裁に就任したのは2012年で、在職年数の長さでは1907年のSNB創立以来2番目となる。副総裁はマルティン・シュレーゲル氏。3人目のメンバー、アンドレア・メクラー氏は今月末に退任する他のサイトへため、現在後任探しが行われている。

他国と比較すると、SNBの意思決定機関は小世帯だ。例えば英イングランド銀行(BOE)では9人、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)では最大12人、欧州中央銀行(ECB)では最大21人が金融政策の決定に携わる。

銀行評議会とは何をする機関?

SNBの監督機関である銀行評議会は、経済、学術、政治の各分野を代表する11人で構成される。そのうち6人は連邦内閣が指名し、残り5人はSNBの総会で選出される。評議会は、総裁の給与、SNBの組織や規定について決定権を持つが、金融政策には口出しできない。

総裁・理事を任命するのは誰?

SNBの理事会と総裁の正式な選出は連邦内閣が行う。ただし選出の基となる候補者リストは銀行評議会が提出するため、その影響力は無視できない。評議会の推薦に従う必要はないが、拒否する場合、内閣はその理由を説明しなければならない。連邦議会は、この件に関し介入できない。

他の中銀では、より政治色の強い任命プロセスが一般的だ。米国では大統領が指名した理事候補を上院が選出する。英国では、国王が首相の要請を受けてBOE総裁を任命する。その際財務大臣が助言を行うことが多い。

理事が解任されることもある?

SNB理事会のメンバーは、重大な不正行為があったり、こうしたポストにふさわしい要件を満たさなくなったりした場合(醜聞も含まれる)、解任されることがある。連邦内閣は銀行評議会の要請に基づき総裁を解任する権限を持つ。

米大統領も、同様の理由でFRBの議長を解任できる。ただし大統領が議長を通常の理事に降格させられるか否かについては、解釈が確立していない。

SNBの所有者は?

SNBの株式は半数以上を州と州立銀行及びその他公的機関が、残りは個人投資家が所有している。連邦の出資はゼロだ。

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