注目ポイント
インド東部で2日に起きた列車3台が絡む事故では、少なくとも275人が死亡し、900人以上が負傷した。同国ではこれまでにも重大な鉄道事故が何度も起きているが、今回は世界最悪規模とされる記録的な犠牲者を出す大惨事となった。
インド東部オディシャ州バーラソール地区で2日、旅客列車同士が衝突し、少なくとも275人が死亡、900人を超える負傷者が出た。政府当局者が明らかにした。事故現場には200台以上の救急車が駆け付け、180人の医師が動員される未曽有の大事故となった。
鉄道当局によると、コルカタとチェンナイの間を走る「コロマンデル特急」が、別の旅客列車「ハウラー・スーパーファースト特急」と衝突した。事故の経緯に関する情報はまだ錯綜(さくそう)している。
報道によると、コロマンデル特急は停車中の貨物列車に追突し、押し出された貨物列車に南部ベンガルール(旧バンガロール)を出発しコルカタへ向かっていたハウラー・スーパーファースト特急が突っ込んだという。
バイシュナブ鉄道相は、運行システムに問題があった可能性があるとの見方を示し、各列車のルートを設定して列車の安全な運行を保つためのシステムに、何らかの理由で問題が生じた恐れがあると説明した。地元メディアは、現場付近の路線に衝突を自動的に防止する装置が設置されていなかったことが分かったと報じていた。
同鉄道相は5日、死者の身元の特定を急ぐ方針を示した。現場での身元確認が難航しており、同州政府によると、4日の時点で特定できたのは、275人のおよそ3分の1の約90人にとどまっている。
世界最悪規模とされる記録的な死傷者数となったことから、遺体安置所が不足する事態にも直面している。バーラソールに設けられた安置所は保存設備が整っておらず、多くの遺体が現場から150キロ以上離れた州都ブバネシュワルの病院などに移送された。家族らも長距離の移動を強いられ、身元確認をより難しくしている。
事故の翌日にはモディ首相が事故現場を視察し、負傷者が搬送された病院などを訪れた。同氏は、「この悲しい状況から一刻も早く抜け出せるよう祈る」と述べるとともに、事故の責任は必ず問われると国営テレビ・ドゥールダルシャンに語った。
インドの鉄道網は総延長6万キロ以上に及び、世界最大規模を誇るが、事故が頻発してきた。資金不足から線路や車両の整備が行き届いていないことや、速度超過などが原因とされる。ここ20年で50人以上の死者を出した鉄道事故だけで13件も発生。そのうちの3件は人為的なミスを受けてのものだった。
近年起きた大規模事故としては、2018年に北西部パンジャーブ州アムリトサルで花火を見ていた人々に電車が突っ込み、60人が死亡した事例が挙げられる。AFP通信は、同国で甚大な被害を出した鉄道事故3件を以下の通り紹介。うち2件は今回の事故よりも多くの犠牲者を出していた。