2023-06-05 政治・国際

台湾海峡で中国軍艦が米軍艦に〝幅寄せ〟 アジア安全保障会議では米中が批判の応酬

© Photo Credit: GettyImages 中国の李尚福国務委員兼国防相

注目ポイント

台湾海峡を通過していた米海軍のミサイル駆逐艦チャンフーンに対し、中国軍艦が約140メートルの近距離まで接近したとして、米インド太平洋軍は5日までに声明を発表し、中国軍艦の行為が危険で、「国際水域で安全に航行するという海上のルールに違反する」と非難した。先週末にシンガポールで開催されていた「アジア安全保障会議」では米中双方が批判を応酬し、対立が際立った。

米インド太平洋軍は5日までに、中国軍艦が台湾海峡を通過していた米海軍のミサイル駆逐艦チャンフーンに約140メートルの距離まで接近したと発表。中国軍艦の行為は危険で「国際水域で安全に航行するという海上のルールに違反する」と声明で批判した。

声明によると、チャンフーンは現地時間3日、カナダ海軍のフリゲート艦モントリオールと共に台湾海峡を南から北に通過していた。中国軍艦は、チャンフーンの船首から約140メートルの距離を横切るなど挑発行動を展開し、チャンフーンはコースを維持しながら衝突を避けるために減速した。

シンガポールで2~4日に開催された「シャングリラ・ダイアローグ(アジア安全保障会議)」はアジア・太平洋地域を中心に、国防、安全保障の担当閣僚らが参加。中国の李尚福国務委員兼国防相は同会議で4日、中国軍艦がチャンフーンに〝幅寄せ〟したことについて言及。「中国は〝無害通航〟は何の問題もないとしているが、航行の自由(パトロール)、つまり無害通航を利用し、航行の覇権を行使しようとする試みを阻止しなければならない」と主張した。

同会議で4日に演説した李氏は、米国の「インド太平洋戦略」がアジア太平洋地域を不安定化させていると批判し、中国が地域の平和と安定に貢献する考えを表明し、国際秩序の構築を主導することに意欲を見せた。3日に演説したオースティン米国防長官に対抗した形で、米中の対立が鮮明になった。

3月の国防相就任以来、李氏が国際的な主要会合でスピーチしたのは初めて。

李氏は、「中国の新しい安全保障イニシアチブ」をテーマに演説し、米国の「インド太平洋戦略」が「排他的な軍事同盟」を通じてアジア太平洋で北大西洋条約機構(NATO)のような枠組みの形成を狙っていると非難。「紛争や衝突を招くだけだ」とし、米国による中国包囲網の強化に反発した。そして習近平国家主席が提唱する「グローバル安全保障イニシアチブ」は、「開放的で寛容な地域協力を推進する」と主張した。

同氏はまた、米中が「衝突すれば世界は耐えられない苦痛を受ける」と述べ、関係安定の重要性を訴えつつ、「米側が誠意を持って言行を一致させ、実際の行動で中国と共に進むべきだ」と迫った。一方で中国は米国が要請した正式な米中国防相会談を拒否。米国がロシアからの武器調達を巡り李氏に科した制裁が要因とみられる。

オースティン氏はアジア安全保障会議での演説で、中国が軍事圧力を強める台湾海峡で紛争が起きれば「壊滅的」な結果をもたらすとして、「台湾海峡の平和と安定を維持する決意」を表明。北朝鮮が「軍事偵察衛星」打ち上げを試みるなど、厳しさを増す東アジアの安保環境に強い危機感を示した。

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