2023-06-04 経済

スイスの仮想通貨銀行SEBA 会長が語る成功の秘訣

© ツークにあるSEBA本店 swissinfo.ch

注目ポイント

世界初の仮想通貨銀行として話題を呼んだスイスのSEBA(セバ)。仮想業務開始から3年半、仮想通貨業界に逆風も吹くなかで順調に業務を拡大している。拠点をアブダビやシンガポールなど5カ所に広げ、これまでに仮想通貨で総額約2億3千万フラン(約350億円)の資金調達に成功した。

スイスの仮想通貨銀行SEBA他のサイトへのパイヴィ・レコネン会長(54)が、ツーク市内の本社でswissinfo.chとのインタビューに応じた。同社は2018年設立、2019年11月に仮想通貨業務を開始した。現在は本社のあるスイスを含む5カ国に従業員約120人を抱える。本社は若いIT専門家たちが集まる倉庫やシェルターのような場所かと思いきや、ラグジュアリーなプライベートバンクの社屋さながらだった。

2020年9月からSEBAの会長を務めるパイヴィ・レコネン氏はフィンランド出身。母国のユヴァスキュラ大学で経済学と社会学の修士号を取得した。シスコシステムズ(米)、ノキア(フィンランド)、UBS(以下スイス)、クレディ・スイス、アデコなどの大手企業で、DX(デジタル化による変革)分野のさまざまな戦略的役職を担い、国際的なキャリアを積んできた。また、インドのIT大手ウィプロやフィンランドの工業用クレーン大手コネクレーンズなど国際的企業の取締役を務める DR

swissinfo.ch:スイスの好きなところと嫌なところを教えてください。

レコネン:私が夫と共にスイスに来たのは何年も前のことです。私たちははじめ、ただの通過点と考えていましたが、この小さいけれども非常に国際的でダイナミックな国がとても気に入り、定住を決めました。驚かれるかもしれませんが、よく考えてみても、嫌なところは全くありません。

swissinfo.ch:スタートアップの経営者には若い人が多いですが、あなたやSEBAの最高経営責任者(CEO)には30年以上の経験があります。

レコネン:当行は、特に年齢に関して多様性を重視しています。私自身は革新的な技術の開発と応用を繰り返し経験してきました。これらすべての経験、知識、スキルは、より良い決断と危険の回避に役立つはずです。しかし、私たちは年齢や経験の違いを超えて、ブロックチェーン(分散型台帳)など暗号技術に対する情熱で結ばれています。

swissinfo.ch:SEBAは「仮想通貨銀行」です。具体的にはどのような銀行ですか。

レコネン:当行は他のスイスの銀行と同じように、スイス金融市場監督機構(FINMA)から銀行免許を取得しました。したがって、すべての活動がFINMAの規制・監督を受けます。

当行は個人投資家や機関投資家に、資産運用、クレジットカード、融資など幅広いサービスを提供するだけではなく、仮想通貨などのデジタル資産に特化したインフラと専門知識を有しているのが特徴です。

swissinfo.ch:デジタル資産に特化するメリットは何ですか。

レコネン:資産の一部をビットコインやイーサリアムといった仮想通貨に投資したいと考える投資家が増えています。自分でもできますが、複雑です。また、デジタル資産が適切に保管されていない場合、リスクは高まります。ハッキングによってすべてのデジタル資産を失う恐れがあります。

そこで当行はこのような投資家に仮想通貨の利便性だけでなく、安全性の高い保管を提供しています。例えば、ビットコイン口座とクレジットカードなど他の商品との関連づけも可能です。そして、多くの伝統的な銀行が顧客のデジタル資産管理に当行の暗号技術を利用しています。

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