2023-06-03 政治・国際

カカオを最大限に活用するためにアフリカができる5つのこと

注目ポイント

チョコレートの原料となるカカオ豆は、西アフリカが世界生産量の75%を占める。だが現地の生産者のうち、カカオ栽培で生計を立てられるのはわずか5分の1だ。どうしたらこの状況を改善できるのか?5人の専門家に聞いた。

西アフリカのカカオ農家の約100万人は、基本的な生活を送るのに十分な収入を得ていない Swissco/SWI

西アフリカのカカオ農家約500万人のうち、約100万人は衣食住や教育、医療などの基本的な生活水準他のサイトへを保つのに十分な収入がない。市場調査会社マーケッツアンドマーケッツの2023年市場調査報告書によると、世界のチョコレート市場1200億ドル(約16兆7千億円)のほぼ半分はネスレ、リンツ&シュプルングリー、フェレーロなどの欧州企業の懐に入る。3割はマース リグレー、モンデリーズ、明治などの北米・アジア太平洋地域の製菓大手の取り分だ。一方、コートジボワールやガーナなどアフリカのカカオ生産国は、自分たちに回ってくるのはわずか5%だと主張する。

このギャップを埋め、カカオ農家の基本的な生活を保証するためにアフリカは何をすべきか。swissinfo.chは、カカオ豆とチョコレート産業に携わるスイス人専門家5人に見解を聞いた。

1.カカオ豆の供給量を管理せよ

チョコレートメーカー、小売業者、NGO、研究機関が共同で出資する非営利組織「持続可能なカカオのためのスイスプラットフォーム(SWISSCO)」の最高経営責任者クリスチャン・ロビンさんは、主な問題はアフリカのカカオ豆の生産量が市場の需要を上回っていることだと指摘する。このため国際的に買い手市場に傾き、価格が上昇しないというわけだ。

クリスチャン・ロビンさん Swissco

ロビンさんは「コートジボワールはここ10年でカカオ豆の生産量をほぼ倍増させた。例え一筋縄ではいかなくても、アフリカの主要生産国はいずれ供給量の管理を改善する必要が出てくる」と語る。

またロビンさんは、カカオ豆の価格変動に振り回されないよう、西アフリカの農家は栽培する作物を多様化することが望ましいと話す。収入の向上にはフェアトレード認証の取得も有効だ。スイスのフェアトレード認証機関マックス・ハヴェラーは、カカオ豆1トンにつき最低2400ドルを提示する。これはコートジボワールのコーヒー・カカオ評議会が2022/23収穫年度のメインクロップ(乾期に収穫されたもの)に定めた生産者買い上げ保証価格より約300ドル高い。問題は、認証の恩恵にあやかりたいカカオ農家を全て受け入れられるほどフェアトレード・チョコレートの需要がないことだ(スイスのチョコレート販売総額のわずか15%)。

マックス・ハヴェラーのビジネス開発マネージャー、ヤニック・ロンメルさんは「多くの農家が私たちのプログラムへの参加を望んでいるのは、とても喜ばしいことだ。残念ながら、フェアトレード認証を受けたカカオ豆の量は、市場でさばける量をはるかに上回っている」と話す。

ヤニック・ロンメルさん Fairtrade Max Havelaar

2.時代遅れの制度を改革せよ

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