注目ポイント
安定した国、安定した通貨、安定した生活。国際的に見ても、スイスではたくさんのことが滞りなく機能している。その要因の1つが国家機関に対する厚い信頼だ。
警察官は究極の事態に直面してもプロとして行動しなければならない。swissinfo.chは東部スイス警察学校で行われている極限状態への対処の訓練を取材した。
豊かさとスイスフランが築く信頼
スイスは法治国家として機能していて、個人の自由も広く認められている。政治制度は個人や政党に権力が過度に集中しないように設計されている。住民や国民は横暴な振る舞いに対して身を守ることができる。研究や報道の自由も保障されているが例外もある。例えば銀行法だ。
比較的信頼度が高いのは、高い生活水準のおかげでもある。スイスの住民の大半は経済的に安定した生活を送っている。
住民の15%弱が貧困またはそれに近い状態にある。食品、エネルギー、消費財の価格上昇による打撃が特に大きいのがこの層だ。
ここ数年のスイスの物価上昇率が近隣諸国と比べて緩やかなのは、スイスフランのおかげでもある。スイスフランはインフレに対して驚くべき安定性を発揮する。
平和なアルプス国家に対する不満
スイスでの生活は快適だと感じる人が多い一方、予想外のことが何も起こらない所で素晴らしい芸術が生まれるのだろうか?という批判を生んできた。
19世紀にも、スイスで唯一のノーベル文学賞受賞者カール・シュピッテラーがアルプス山脈を爆破して吹き飛ばすという空想を物語にした。以来、「国家の安定に対する不満」はあらゆる世代で繰り返し創作主題になってきた。
確かなのは、爆破を空想ゲームにできる人間は、爆撃される可能性がとても低い場所で生活しているということだ。
スイスの歴史上、この永遠の安定が終わると多くの人が危惧した時が何度もあったのもまた事実だ。
信頼が損なわれる時
2023年にスイス連邦憲法は生誕175周年を迎える。この記念すべき年に、憲法の全面改正を求めるイニシアチブ(国民発議)が立ち上がっている。
スイスでも今や、各機関は正当性を守るべく戦い、これまで肩書きだけで信頼を得られた役職に就く人々も積極的に努力しなければならない。
スイスは他の民主主義諸国と同様、いかに国民の社会的結束を育て、維持するかという問題に直面している。ただスイスの立ち位置はそう悪くはない。
編集:David Eugster、独語からの翻訳:谷川絵理花
この記事は「SWI swissinfo.ch 日本語版」の許可を得て掲載しております。