2023-06-02 政治・国際

台湾の新リーダーは誰に?総統選まで7か月、3候補巴戦のゆくえ【小笠原欣幸の視線】

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注目ポイント

来年1月に実施される台湾の総統選で、主要3陣営の候補がついに出そろった。与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳(党主席・副総統、63歳)、最大野党・中国国民党(国民党)の侯友宜(新北市長、65歳)、第三勢力・台湾民衆党(民衆党)の柯文哲(党主席・前台北市長、63歳)の3氏である。今後それぞれ副総統候補とペアを組み、課題山積する台湾の、次のリーダーの座をかけてしのぎを削り合う。今回は、候補に決まった経緯や各世論調査による支持率の動向、立ち上がりの選挙活動から垣間見える課題などを分析する。

郭氏参入でもつれた国民党の公認候補指名

頼清徳氏と柯文哲氏は党内に対抗馬がなく、すんなりと公認候補に決まったのに対し、侯友宜氏の場合は郭台銘氏(鴻海精密工業の創業者、72歳)の挑戦を受け、決定までのプロセスがもつれる形になった。

朱立倫主席が率いる国民党は2月時点では侯友宜氏擁立でほぼまとまっていた。

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中国国民党の侯友宜氏

侯氏は昨年11月の地方選で市長に再選されたばかりであったので、自ら積極的に立候補に動くのではなく、党中央の指名を受けて出馬する受動の戦略を描いていた。この戦略は侯陣営と国民党中央とで共有されていた。

そこに郭台銘氏が「国民党の公認指名を目指す」と宣言し、積極的な活動を展開した。それが4月である。

「静」の侯友宜に「動」の郭という対比で、郭氏には確かに勢いが感じられた。

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鴻海精密工業創業者の郭台銘氏

しかし、支持率の調査を見ると、郭氏は先行する頼清徳氏に追いつくことはなかったし、侯友宜氏を明確に上回るところまでも行かなかった。国民党中央は5月17日、予想されていた通り侯氏を公認候補に指名した。

国民党は指名の根拠として、(a)支持率、(b)党所属県市長13名の支持動向、(c)党所属立法委員および公認が決まった立法委員候補57名の支持動向の3つを提示した。

(a)の支持率は、侯友宜氏51.15、郭台銘氏48.85であった(国民党の計算式による)。

(b)の県市長は、侯氏支持10名、郭氏支持1名、党の決定を支持が2名であった。

(c)の立法委員関係は、侯支持22名、郭支持13名、党の決定を支持が22名であった。

昨年選挙を戦った県市長は圧倒的に侯友宜氏支持であった。立法委員関係には郭台銘氏支持もいるが、侯氏とは差がある。総統選挙は候補者が1人で戦うのではなく、立法委員選挙の候補者、そして,県市長、県市議など党所属のあらゆる公職者に支えられる。朱立倫氏の党中央としては,そうした現場の支持が高い侯氏を指名するのは当然のなりゆきであった。

ところが郭台銘氏は「自分が指名される」と思い込んで活動を続けたため、党中央も対応に苦慮することになった。郭氏は知名度・発信力が高く、資金も豊富であり、陣営にとどまって支援してもらうためにも、郭氏には一定の配慮をする必要があった。

例えば、郭氏は出馬宣言の時点で国民党の党員資格を回復していなかった(現時点でも党員ではない)。理論的には門前払いも可能であるが、国民党中央は特例で検討対象者に含めた。また、郭氏を納得させるため、本来発表したくない内部の世論調査の詳細なデータまで発表した。それによると、郭氏は頼清徳氏に5.6ポイントの差をつけられ2位、侯友宜氏も頼氏に5.0ポイントの差をつけられ2位で、しかも両者とも柯文哲氏にはほぼ並ばれた状態であることが明らかになった。

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