2023-05-31 政治・国際

台湾安全保障トップ「海峡の現状維持」強調 中国の一方的なレッドラインは認めない姿勢

© Photo Credit: GettyImages 台湾の国家安全会議の顧立雄秘書長

注目ポイント

蔡英文総統の上級顧問は今週、台湾は将来、マッカーシー米下院議長の訪問を歓迎するとし、中国が台湾の米国との関係を一方的に制限する〝レッドライン〟を認めないと明言。台湾有事を回避するためには、台湾海峡の平和と安定を現状維持することの重要性を説いた。

米CNNなどによると、オンラインニュース「Zメディア」が29日にライブ配信した政治評論家フランシス・ファン氏とのインタビューで、台湾国家安全会議の顧立雄(こ・りつゆう)秘書長は、4月初旬に行われたマッカーシー米下院議長と蔡英文総統の会談を振り返り、台北ではなく米カリフォルニア州だったことについて、双方にとって「合理的なセッティング」であり、「控え目なものだった」と語った。この会合をめぐり中国は強硬に中止を要求していた。

顧氏はまた、昨年8月のペロシ前下院議長による台湾訪問にも言及し、「マッカーシー氏が今後、訪台したいのであれば、ペロシ氏同様に歓迎する」と明言。台湾と米国の関係について、「(中国が越えてはならないとする)レッドラインを一方的に引くことは許されない」と語った。

現職の米下院議長としては四半世紀ぶりに実現したペロシ氏の訪台に、当時の中国は猛反発。数日間にわたる台湾周辺海域での実弾訓練や、台湾上空に弾道ミサイルを発射するなど、挑発的な軍事行動を繰り返した。また、先月のマッカーシー氏との会談後には、台湾海峡を封鎖するシミュレーションを展開した。

マッカーシー氏は今後、代表団を率いて訪台する可能性を排除しないとし、「現時点で計画はないが、行かないという意味ではない」と強調。「私は米国の下院議長だ。私がどこに行き、誰と話そうと、中国に指図される筋合いはない」と不快感を示した。

顧氏は、蔡政権の2期目が始まった2020年5月に国家安全保障会議のトップに就任。米国と台湾の一部当局者が懸念する2027年の台湾有事の可能性について、同氏は「われわれはそう言った予測には加わらない」と一蹴。

「もし中国が本当に(武力制圧を)計画しているのであれば、われわれのすべきことは、挑発せず、軽率な行動もせず、台湾海峡の平和と安定を現状維持することによって、これらの計画を無期限に延期することだ」と訴えた。

さらに、「現状を維持することはわれわれだけの責任ではなく、米国や同じ考えを持つ国々を含む世界共通の責任だ。(中国は)そのような決断には耐え難い代償を支払わなければならないことを当然認識するだろう」と述べた。

もし台湾有事が起きた場合、米国は台湾の技術が中国の手に渡るのを阻止するため、米軍が世界最大の半導体受託製造企業である台湾積体電路製造(TSMC)の工場を破壊する可能性があるという推論について聞かれた顧氏は、「有り得ない」と笑い飛ばした。

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