2023-05-31 政治・国際

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第14回:G7広島サミット大成功で台湾を巡る状況の変化とこれからの日台中の行く末について

注目ポイント

5月21日に閉幕したG7広島サミット(先進7カ国首脳会議)。最終日にはウクライナのゼレンスキー大統領が討議に参加するなどウクライナとの連帯を世界に示した一方、台湾海峡の平和と安定については「国際社会の安定と繁栄に不可欠」と言及され、その重要性が格上げされたことがうかがえました。今回のサミットで台湾を巡る状況はどのように変化していくのか。山本一郎さんの月イチ連載です。

岸田文雄政権肝いりで進めていた、G7広島サミットが予定されていたすべてのセッションを終えて無事閉幕しました。
概ねにおいて、やはり大成功のサミットだったのではないでしょうか。

今回は特に、ウクライナへの侵略を続けるロシアによる核兵器の利用を牽制するために多くの時間が割かれ、この中で、文脈として力による現状の変更への強い抑制がテーマとして織り込まれていたのは大きかったように思います。一年以上ウクライナに抗戦されているロシアが、それでもなお核兵器を使わないのは、皮肉なことに核兵器による抑止が効いているってことになるので、核兵器廃絶の理想はあれども有効性は改めて証明されちゃった、というのが実際ではないかと思います。

台湾に関する声明でも改めて、首脳声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が3年連続で明記されたことを受け、こちらでも満額回答に近い内容で良かったなと。引き続き「国際社会の安全と繁栄において、不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する」とした上で、「台湾に関するG7各国の基本的な立場(すでに表明された『一つの中国政策』を含む)に変更はない。われわれは、両岸問題の平和的解決を促す」と盛り込まれ、実質的に、台湾問題についてはG7での外交方針において格上げで一致したことになります。

ウクライナ問題に引っかけた台湾問題でついでに話されたというよりは、アジアにおける台湾の戦略的要衝についての再確認といった趣があるだけでなく、中国の脅威に晒されている台湾の皆さんへのエールにも近い話であって、ここから『一つの中国政策』に関する進め方を踏み込んで議論されていくことを期待しています。

それまでも、フランス大統領のマクロンさんが中国訪問後に台湾問題をやや軽視する姿勢を示して、それはアメリカ・バイデン政権に対する一定の利益表明・牽制であったことも踏まえると、今回のG7での台湾関連の首脳声明は元さや、雨降って地固まる的な流れになったことは歓迎されるべきでしょう。

他方、先日シンガポール国立大学の劉遥教授とニューヨーク大学上海校の李暁隽准教授による共同研究において、2020年末と21年に行われたオンライン調査で1,824人にアンケートしたところ、回答した中国人の約55%が「台湾武力統一に賛成」と答えています(反対が33%)。これを「過半数の中国人が台湾への武力行使に賛同している」と見るか、これに対して「半数程度しか賛成はしていない」と感じるかは微妙なところです。いわばコップに半分の水が入っている状態を「半分も入っている」のか「半分しか入ってない」のかという見方の問題なわけですよ。民主主義ではない中国とはいえ習近平体制による台湾武力侵攻は必ずしも中国人大多数が受け入れる意見とは言えないと見るほうが正確かもしれません。

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