2023-05-29 政治・国際

【黒鳥英俊の動物万歳!】③ 「動物の権利と福祉」考えさせる遺構も点在、新生「新竹動物園」

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注目ポイント

1914(大正3)年に開園し、台湾最古の歴史を誇るのが台北市立動物園だが、1936(昭和11)年の開園以来、移転することなく同じ場所で歴史をつないできた最古の動物園が新竹市立動物園だ。上野動物園や多摩動物公園で主に大型類人猿の飼育を担当し、現在、認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン理事長および日本オランウータン・リサーチセンター代表として大学などで類人猿の保護、啓蒙活動を行う黒鳥英俊氏が台北動物園に続き新竹動物園の魅力に迫る。

駅前の一等地にある新竹市立動物園

台湾・新竹市は台北の空の玄関口でもある台湾桃園国際空港から南西約60キロメートル、車ならば約1時間という近さに位置します。この「新竹市」は現地での一般的な発音では「Xīn zhú shì」なので、日本人の耳には「しんじゅう・し」と聞こえますので、ドキッとする人もいるかもしれません。ただ桃園空港に到着した旅行客の多くは、新竹とは正反対の台北に行ってしまうので、観光客などは、ここに大きな都市があることに気づかないケースがほとんどです。

ビジネスマンにとって新竹市は、今を時めくITや半導体関連企業が集中する、台湾のシリコンバレー分野においての最重要エリアです。が、そこはやはり台湾。他の主要都市と同様、日本統治時代の面影を色濃く残す歴史ある都市でもあります。

日本統治時代の新竹州庁(現新竹市政府庁舎)正面=2017年8月(筆者提供)

今回取り上げる新竹市立動物園(以下、新竹動物園)は、なんと在来線新竹駅から目と鼻の距離、よくある「駅前なんとか」というCMではありませんが、まさに「駅前動物園」と呼びたくなる距離感なのです。

周囲を清華大学や陽明交通大学などに囲まれた公園エリア内に位置するこの新竹動物園は1936(昭和11)年に開園しました。

台湾で最古の歴史を持つ動物園といえば前回まで取り上げた1914(大正3)年開園の台北動物園(円山動物園)ですが、台北動物園は1986年、手狭になった中山区の円山公園内から現在の文山区木柵に移転したため、園の施設自体の歴史では1936年(昭和11)に開園した当時から駅前にあるこの新竹動物園こそが台湾でもっとも古い動物園施設といえます。それゆえ園内を歩くと古い動物舎や、日本統治時代の石造物などをみることができました。

 

戦前、戦後、繰り返した荒廃と復興

新竹動物園は日本統治時代からとても活気に満ちていました。動物も充実し、多くの人が訪れて、充実した時代であったとの記録があります。

戦後の混乱期に施設は荒廃し、動物も台北動物園にひきとられましたが1953年に再び動物園としての姿を取り戻します。そのきっかけをつくったのが日本在住の台湾人実業家、何国華氏で、ツキノワグマやゾウなど数多くの動物を購入して日本から新竹動物園に寄贈するなど、長くこの動物園の安定した発展を助けたそうです。

しかし、その後の動物園は飼育や繁殖も思うようにいかず、時間の経過とともに動物数の減少が見られ、一般入園者数も減少し続けていました。

そこで2017年5月、新竹市は新竹公園再生プロジェクトに伴う改修のため全面休園し、新しい動物園へと改修工事に入りました。

閉園リニューアル中の新竹市立動物園=2017年8月(筆者提供)
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