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米フロリダ州で7月から施行される、中国人など特定国からの外国人に対して不動産の取得を禁じる新たな州法をめぐり、同州で働き、暮らす4人の中国人が同州政府を相手取り訴訟を起こした。
米フロリダ州で働く中国人の住民4人が同州にある連邦地裁に23日、中国など特定国からの外国人が同州で不動産を所有することを制限する新たな州法が7月に施行されることをめぐり、「自分たちやコミュニティを差別し、フロリダ州で不動産を購入しようとする中国系住民に疑いの目を向けられることにつながる」と訴え、州政府を提訴した。
7月1日施行のこの不動産法は、「懸念される特定国」を中国、ロシア、イラン、北朝鮮、キューバ、ベネズエラ、シリアと定義し、それらの国の人がフロリダ州で土地や住宅を購入することを制限する。
具体的には、空港、軍事施設、宇宙港、製油所、発電所、水および廃棄物処理施設、港軍事施設などの「重要インフラ施設」から10マイル(約16キロ)以内にある不動産所有を禁止する。また、特定国の企業による農地の購入も禁止される。新法で制限される不動産をすでに所有している特定外国人は、州に届け出なければ罰金を科せられる。
原告を代表する米公民権団体「アメリカ自由人権協会」(ACLU)は、新法は違憲であり差別的で、公正住宅法に違反しているとして上で、「米国内の全ての人は、他国の国民も含め、法律の下で平等に保護される権利がある」と主張した。
ACLUは、「アジアやロシア、イラン、キューバ、ベネズエラ、シリアの名前っぽく聞こえる氏名を持つ住民誰もが不動産を購入しようとする際、不当な疑いの重荷を課すことになる」とした。さらに、「フロリダ州の中国人が不動産を所有することで、国の安全保障が脅かされたという証拠は存在しない」とも訴えた。
24日に2024年大統領選の共和党候補指名争いへの出馬を表明したフロリダ州のロン・デサンティス知事は、今月初めにこの法案に署名し、この措置は「フロリダ州における中国共産党の悪影響に対抗するため」だと強調した。
英BBCは、新法が中国人と中国企業への不動産販売を制限することに重点を置いていると説明。「中国人や中国企業が不動産を購入、もしくは中国人や中国企業と知りながら不動産を販売することは重罪となり、他の特定国の個人が違反した場合の刑罰は軽犯罪になる」としている。
米国では共和党も民主党も、送電網や選挙投票システムなど米国の主要インフラに対する中国、イラン、ロシアによる国家主導の妨害行為の可能性について長年懸念を表明してきた。
同様の措置を講じているのはフロリダ州だけではない。モンタナ州の共和党知事は5月初め、中国企業や国民による農地や、特定の重要インフラ付近の不動産購入を制限する法案に署名。テキサス州もこれらの方針に沿った法案を検討している。