2023-05-23 政治・国際

米国、ウクライナへF16戦闘機の供与容認 欧州の「戦闘機連合」創設に環境整備加速

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注目ポイント

バイデン米大統領は21日、先進7か国首脳会議(G7広島サミット)に参加したウクライナのゼレンスキー大統領と広島市で会談し、欧州の同盟国による米国製F16戦闘機のウクライナ供与を容認する考えを伝えた。ゼレンスキー氏はこれまでも西側諸国に対し、戦闘機の供与を求めてきたが、なぜF16がそこまで必要なのか―。

G7広島サミットの記者会見で、米国はウクライナ軍パイロットへのF16を含む第4世代戦闘機の訓練を支援すると発表。英国も夏に訓練を始める方針で、欧州諸国による戦闘機供与や運用に向けた「戦闘機連合」創設の環境整備が加速した。

バイデン氏は記者会見で、F16をロシア領土への攻撃に使わない「保証」をゼレンスキー氏から得たとし、侵攻が続く限り「経済的、人道的、軍事的支援を続ける」とも強調。F16が投入されれば、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対抗する上で必要な空軍力の増強となるが、実戦配備にはまだ時間がかかる見通しだ。

この「戦闘機連合」がウクライナにどのような影響をもたらすか。米紙ニューヨーク・タイムズは次のように解説した。

 

ウクライナの空軍力

ウクライナは旧ソ連の遺産であるソ連設計の老朽化した戦闘機やヘリコプターを多数保有している。ウクライナ軍のユーリ・イナット報道官によると、空軍の航空隊にはMiG29などの戦闘機、爆撃機、輸送機や訓練機が含まれている。

西側の軍事専門家らは、ロシアの侵攻が始まって以来、空軍と陸軍が保有するウクライナの軍用機は、すでに3割以上消耗したと推定し、ここ数か月間に流出した米軍の機密資料によると、ウクライナは通常の軍用航空機145機のうち少なくとも60機、ヘリコプター139機のうち32機を失ったとしている。

イナット報道官は、「最新の航空機は1991年製」とした上で、「これらすべてを整備、修理し、スペアパーツを入手する必要がある」を説明。ロシアは多くの部品の唯一の生産国であるため、スペア部品の入手が問題となっている。さらに、昨年2月の侵攻が始まる前でさえ、ロシアの支援部隊がウクライナ東部の一部とクリミア半島を制圧した2014年以降、部品調達はほぼ停止していた。

ロンドンの英国王立防衛安全保障研究所が11月に発表した報告書によると、全体としてウクライナ空軍はロシア空軍に比べて「技術的に劣っており、数もかなり少ない」という。

 

ウクライナの空軍事情

同研究所の報告書によると、侵攻初期にロシア軍がウクライナの防空システムに侵入した際、ウクライナのミコヤンMiG29戦闘機とスホーイSu27戦闘機が自国空域の大部分を防衛し、爆撃を阻止するため空中戦を繰り広げた。また、ウクライナ軍の戦闘機はロシア軍機に損害を与えたと同時に「多くの死傷者も出た」とされる。

ただ、ロシアは優れた航空隊を保有しているにもかかわらず、ウクライナの強力な防空システムにより、ウクライナの制空権を獲得することができておらず、西側が供与した最先端の兵器により防衛はますます強固になってきている。

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