2023-05-22 政治・国際

「気候保護はスイスのエネルギー安定供給を強化する」

注目ポイント

急進民主党のジャクリーヌ・ド・クアトロ下院議員は、新しい気候保護法がスイスのエネルギー自立を促進し、国内経済にチャンスをもたらすと断言する。

急進民主党(FDP/PLR)のジャクリーヌ・ド・クワトロ下院(国民議会)議員 © Keystone / Alessandro Della Valle

スイスの有権者は6月18日の国民投票で「気候変動目標・イノベーション・エネルギー安全保障の強化に関する連邦法(KIG/LCI)」(通称・気候保護法)の是非を問われる。「氷河イニシアチブ(国民発議)」の対案として作成された同法案は、2050年までに国内の温室効果ガス排出量を実質ゼロ(気候中立)にすることを求めている。再生可能エネルギーへの移行を加速し、エネルギー輸入への依存を減らすことが目的だ。レファレンダムの成立を受けて国民投票の実施が決まった。

2050年までの気候中立目指すスイスの環境新法が国民投票へ

この気候保護法を支持する急進民主党(FDP/PLR)のジャクリーヌ・ド・クワトロ下院(国民議会)議員に話を聞いた。

 

swissinfo.ch:新しい気候保護法は化石燃料の禁止を明確に定めていませんが、気候中立を実現するにはガソリンや石油、ガスを手放す必要があります。車や家の暖房を動かすエネルギーはどこから来るのでしょう?

ジャクリーヌ・ド・クアトロ:これまでスイスはエネルギー供給の再構築にあまり注意を払ってこなかったので、遅れを取り戻す必要があります。連邦議会と内閣は必要な措置を講じていますが、それにはいくつかの要素が不可欠です。エネルギー供給を幅広く多様化する必要があります。水力発電に加え、太陽光発電がエネルギー供給のもう1つの柱になります。冬期電力の3分の2を生産する風力発電もまたエネルギーミックスの中で重要な役割を果たし、太陽光発電所やダムの補完的役割を担うことになります。欧州近隣諸国との協力関係を強化し、エネルギー貯蔵能力を高める必要もあります。

swissinfo.ch:エネルギー危機やウクライナ戦争で電力不足のリスクが叫ばれる中、化石燃料という選択肢を捨てる決断は危険を伴うのでは?

ド・クアトロ:禁止や課税をするのではなくイノベーションに投資することで、スイスは徐々に気候ニュートラルになっていきます。このバランスの取れたアプローチにより、効果的に気候を保護すると同時に、スイス経済にもチャンスを提供します。イノベーションを促進することで付加価値、国内での雇用、輸出市場が生まれます。

現在の地政学的状況では、スイスが外国や化石燃料に依存していることが浮き彫りになりました。スイスのエネルギー自給率は30%足らず。一方で、食料自給率はしばしば不十分とされますが、ほぼ60%に達しています。エネルギー危機に直面し、再生可能エネルギーの開発やエネルギー効率の向上など、早急に代替手段を見出す必要に迫られています。

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