2023-05-18 政治・国際

国民党は侯氏を公認 台湾・総統選主要3候補が出そろい、野党連携の成否も焦点【近藤伸二の一筆入魂】

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注目ポイント

2024年1月に実施される台湾・総統選の主要3候補が出そろった。4月に頼清徳副総統出馬を決定ずみの与党・民主進歩党(民進党)に続いて、最大野党・中国国民党(国民党)は5月17日、侯友宜・新北市長を公認候補に指名。第三勢力の台湾民衆党(民衆党)も同日、柯文哲・前台北市長を正式に公認候補に選んだ。これで三つどもえの選挙戦が本格化するが、国民党内には民衆党との連携を模索する動きもあり、野党協力が実現するかどうかも焦点となっている。

鴻海・郭氏も「最良の人選」と太鼓判

国民党は17日に開いた中央常務委員会で、侯友宜・新北市長の擁立を決めた。その理由として、朱立倫主席は、世論調査の結果や党所属の県市長らの意向を挙げた。公認候補の座を争っていたEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手・鴻海精密工業創業者の郭台銘氏はフェイスブックで「国民党にとって最良の人選だ」と祝意を表し、侯氏を支援していく考えを示した。

指名を受けた侯氏は「今の台湾は、若者が未来を見通すことができなくなっている。この状態を打ち破るには、政権交代を成し遂げて、台湾を救わなければならない」とあいさつし、党内の団結を呼びかけた。

警察官僚出身の侯氏は2010年、新北市長だった朱氏の要請で副市長に就任し、政治の道に入った。2018年の新北市長選で初当選し、2022年の市長選でも圧勝して再選を果たした。庶民的な人柄で、実務型の手腕で安全な街づくりを進め、大衆的人気が高い。

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新北市長・侯友宜氏

一方で、総統選候補として注目が集まるにつれ、中央政界での経験のなさが不安視されるようにもなってきた。侯氏は総統の重要な任務である対中政策や外交政策について、これまで明確に語っておらず、「総統になって、何をやりたいのかわからない」との指摘も聞かれるようになってきた。

侯氏はメディアなどからこうした点について問われると、具体的な内容には触れずに「好好做事情(しっかりやりますよ)」と答えるのが口癖になっており、これをもじって「侯侯做事情」という造語も生まれた。「良い」を意味する「好」の台湾語の発音と「侯」の発音が似ていることからつくり出されたもので、「侯氏流の『やりますよ』」と揶揄するニュアンスだ。

 

頼氏優勢も与党に厳しい世論調査結果

民進党の頼清徳氏が行政院長(首相)や副総統など中央の要職を歴任しているだけに、このような状況は侯氏にとってはマイナスイメージにつながっている。民間シンクタンクの台湾民意基金会が5月15日に発表した世論調査結果では、候補者3人の支持率は頼氏が35.8%でトップに立ち、侯氏(27.6%)と柯氏(25.1%)をリードしている。

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副総統・頼清徳氏

もっとも、頼氏の支持基盤も万全ではない。民進党は2016年から政権を担当し、立法院(国会)でも多数を占める「完全執政」を続けているが、台湾民意基金会の世論調査によると、総統選と同時に行われる立法委員(国会議員)選で、民進党の「完全執政」を「支持しない」の回答が51.1%と半数を超え、「支持する」の40.0%を上回った。

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