2023-05-15 政治・国際

トルコ大統領選は接戦で28日決選投票へ   震災、経済危機で現職エルドアン氏は苦戦

© Photo Credit: GettyImages 現職のエルドアン大統領

注目ポイント

注目のトルコ大統領選は14日投開票され、強権的な現職エルドアン大統領と、民主主義の再建を掲げる野党統一候補クルチダルオール氏との事実上の一騎打ちで、かつてない接戦となった。両候補ともに過半数に届かず、28日に決選投票が行われる運びとなった。

トルコ大統領選は14日投開票され、現地アナトリア通信は15日未明、開票率約96%の段階として、現職エルドアン大統領(69)の得票率が49.44%、野党統一候補クルチダルオール氏(74)が44.86%だと報じた。クルチダルオール氏がエルドアン氏を猛追し、両候補ともに得票が過半数に届かず、28日に決選投票が行われる見通し。

約20年にわたるエルドアン政権の是非が問われた今回の選挙。エルドアン氏はロシアのウクライナ侵攻後も欧米と一線を画し、ロシアとの協力関係を継続。北欧2国のNATO(北大西洋条約機構)加盟をめぐり、フィンランドについては最後の最後で同意したものの、スウェーデンへの加盟はまだ反対し、駆け引きが続いている。欧米重視のクルチダルオール氏と政権交代することになれば、国際社会への新たな流れとなる。

大統領選には計4人が立候補し、15日未明時点で小政党連合のオアン氏が得票率5.3%、小政党、故国党のインジェ党首(11日に撤退表明)が0.4%となっていた。同時に行われた議会選(一院制600議席)は、トルコ紙ハベル・テュルクの開票速報によると、開票率約70%の段階で、エルドアン氏の与党連合の得票率が51.43%と、野党連合の33.93%を上回っている。トルコの有権者は海外を含め約6400万人。

老獪な政治家と評されるエルドアン氏だが、今回は厳しい逆風となった。ただでさえ経済危機の責任を問われていたところへ、2月には大地震に見舞われ、初動対応の遅れと、建築基準の不徹底が多くの犠牲につながった可能性があるとの批判を浴びている。

投票前の世論調査でも接戦が予想されており、識者は、エルドアン氏率いるイスラム主義に根ざした公正発展党(AKP)が、政権を獲得した2002年の状況に似ていると指摘。この時の選挙も、高いインフレ率と経済の混乱が背景にあった。

一方、クルチダルオール氏は、エルドアン政権下のトルコで実施された政策の多くを撤回すると約束。エルドアン氏は、イスラム色の強い保守的な社会を構築し、周辺地域に積極的に働きかける国をめざすという構想に基づいて改革を進めてきた。

ロイター通信によると、エルドアン氏は、かつて宗教的な詩を朗読したことで実刑判決を受けたこともある。16年には軍の一部によるクーデター未遂事件が発生し、反乱兵士が議会を攻撃して250人の犠牲者が出た。切羽詰まった局面は初めてではない。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい