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2023-05-10 政治・国際

カナダ、人権問題巡り中国外交官に退去通告 北京政府は猛反発し、加人領事を追放で応酬

© Photo Credit: GettyImages ジョリー外相

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カナダのジョリー外相は8日(日本時間9日)、カナダ駐在の中国人外交官に対し、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として異例の国外退去を通告したと発表。この外交官は野党・カナダ保守党の議員と香港に住む親族を脅迫しようとしたと報じられていた。一方、中国はこれに反発。在上海カナダ総領事館の領事に同様の措置を通告した。両国関係の一層の緊張は避けられない事態となっている。

カナダのジョリー外相は8日(日本時間9日)、カナダ・オタワ駐在の中国人外交官に対し、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外退去を通告したと発表した。この外交官は、中国当局によるウイグル族など少数民族に対する弾圧を非難するカナダの野党・カナダ保守党のマイケル・チャン議員と、香港に住む同氏の親族への脅迫を企てたとされる。

ジョリー氏は声明で、「外国からのいかなる内政干渉も容認しない。カナダ駐在の外交官がこのような行動をとれば、自国に送還されることになる」と警告した。

一方、在カナダ中国大使館の報道官は同日に談話を発表し、カナダの対応は「国際法に違反しており、断固反対する」と非難。中国政府はカナダ側に「強烈な抗議」を伝え、在上海カナダ総領事館の領事に対し「ペルソナ・ノン・グラータ」として国外退去を通告。カナダ側の「不当な行い」への対抗措置だとしており、領事に13日までに出国するよう求めた。

カナダ安全保障情報局(CSIS)は2021年、中国の影響力に関する報告書を作成。その内容をカナダ紙グローブ・アンド・メールが今月1日に報じたことで問題の外交官らの行動が明らかになった。

それによると、中国当局はチャン氏と親族に関する情報を収集し、同氏を「みせしめ」にして他の議員が反中的な立場を取るのを抑止しようと企て、今回追放となった外交官も、情報収集に関与していたという。チャン氏は21年、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒など少数派に対する中国政府の弾圧は、ジェノサイド(集団殺害)だと非難する決議案を提出し、可決された。

同紙によると、報告書は下院決議を支持した野党保守党議員らと、その親族らが中国当局による脅迫の標的にされていると指摘していた。

外交官の国外追放という今回の異例の決定は、カナダ外務省が中国大使を同省に呼び、中国の外交官の行為は内政干渉にあたるとして遺憾の意を表明してから、わずか数日後に行われた。それに対し中国は、カナダが外交官を国外退去処分にした場合、報復すると警告しており、両国間の緊張関係が高まっていた。

ジョリー氏は4日のカナダ議会の委員会で、中国政府による報復措置の可能性も十分予測していると発言。2018年にカナダが中国の通信機器大手ファーウェイの孟晩舟(もう・ばんしゅう)副会長を、対イラン経済制裁に違反して金融機関を不正操作した容疑で逮捕した際、中国側が報復として在中国のカナダ人2人を拘束したケースと同じ構図だと指摘した。

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