注目ポイント
ゴールデンウィーク最後の週末、台湾のスターラックス航空が強風のため成田に着陸することができず、いったん名古屋に着陸、当日夜、成田に戻りましたが、台湾に向かって飛び立つことができず、乗客は空港で夜を明かすこととなりました。翌日、社長自ら成田へ駆けつけ、乗客に直接謝罪しました。このことは日本と台湾で評価が違いました。今回はまだ日本人になじみがあまりない新参航空会社、スターラックス航空と張国煒社長の数奇な経歴について紹介しましょう。
まさにドラマか漫画の世界
「まるで漫画みたい」「漫画以上」と言われるのは大谷さんだけではありません。恋愛小説のような恋をし、映画のような骨肉の争いをして社長の座を引きずり降ろされ、そしてドラマのようにトップに登りつめていく人、それが今回の主人公、張国煒氏です。

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張国煒氏は1970年、長栄集団(エバーグリーン)創業者張栄発の後妻の子として台北で生まれました。4男です。その後父親の経営するエバーグリーンに就職、当時同社で客室乗務員をしていた葉淑汶と恋に落ち、結婚を望みましたが、御曹司と庶民の娘という格差のため父親に反対されました。張国煒氏はかつて「大きな山と美女、両方とも手に入れるのは最も美しい物語です」とインタビューで言ったことがあります。結局彼は愛を貫いて結婚した結果、親に勘当され、20億元の資産と御曹司という肩書を失いました。追放されてから数年後、母親のとりなしに加えて、自らの起業家としての才能・努力が父親に認められ和解しました。
父親の遺言に従って2016年にグループ総裁に就任しましたが、異母兄弟たちとの確執により、たった4日で解任されました。最近になって裁判所が四男の国煒に全財産を分与するとした父の遺言状の効力をやっと認めたため、遺留分を差し引いた残り、約140億元の遺産を相続することになりました。
また、張国煒氏は2013年に機長試験に合格し、台湾で唯一のパイロット資格をもつ航空会社経営幹部となり、自らが定期便の機長や新機材受領後の自国へのフェリー・フライトを行いました。
スターラックスの成立
2017年、会社所有の飛行機10機体制での始動を示唆するなど航空会社設立の動きを具体化させましたが、新規参入の航空会社に対して資産や資格など様々な厳しい規定がありました。しかし御曹司である張国煒氏の資産やエバーの社長且つパイロットだった経歴など、個人の資質は障害とはならなかったため、交通部(運輸省に相当)は条文改正に踏み切り、張国煒氏のスターラックス(星宇航空)新規参入を認めることになりました。この修正法案は「国煒條款」とも呼ばれています。

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2018年、スターラックス航空が正式に成立しました。「王子の復讐」と台湾の各メディアは書きたてましたが、本人は「もはやプリンスではなくキングである」と反論しました。スタート時点では従業員約200人中30%以上はエバー航空出身者で占められていました。
今では飛行機の保有数は16機にのぼり、2024年末までには27機体制を整える予定です。また、就航地もアジアや北米など18都市あり、どんどん拡張する計画です。