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ウクライナ侵攻に戦闘員を派遣するロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの創設者プリゴジン氏は7日(日本時間8日)、「さらなる作戦を続けるのに必要な弾薬と武器(の提供)が約束された」とSNSに投稿した。軍側から意図的に武器供給を絶たれていると主張し、10日にウクライナ東部の激戦地バフムトから部隊を撤退させるとしていた方針を撤回し、同地での戦闘継続を示唆した。
ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの創設者プリゴジン氏は、ロシア国防省が十分な弾薬を供給しないとしてショイグ国防相らを厳しく批判し、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトからの撤退方針を示していた。ところが7日になって、「さらなる作戦を続けるのに必要な弾薬と武器(の提供)が約束された」とし、一転して戦闘継続を示唆した
プリゴジン氏は、戦闘に必要なものは「全て配備される」と強調。今後、ウクライナでの軍事作戦の副司令官を務めるスロビキン航空宇宙軍総司令官が、「ワグネルの軍事作戦に関する決定権を持つ」と発表した。
同氏は5日、軍による意図的な弾薬不足で「兵員の無駄な死」が増え続けているとして怒りを爆発させ、10日にバフムトから部隊を撤退させると軍当局に迫った。9日はロシアにとって重要な対独戦勝記念日で、モスクワの「赤の広場」では軍事パレードが予定され、ウクライナで「特別軍事作戦」が続く中でプーチン大統領は国民を鼓舞する演説をするとみられる。
その翌日というタイミングでワグネル撤退という事態は、プーチン氏に大きな打撃となる可能性があったことから、軍事アナリストらは、ロシア軍当局がプリゴジン氏に譲歩した結果だとみている。
激戦が続くバフムトはウクライナ軍の補給線が集まる要衝で、ワグネルは同市の攻略を先導する形で戦い、3週間前にはバフムトの80%以上を制圧したと主張していた。だが、弾薬供給が不足しているとしてプリゴジン氏は軍指導部やロシア国防省の失態をなじり、10日に撤退した後は、確保した陣地などをロシア・チェチェン共和国のカディロフ首長率いる部隊に引き渡すとしていた。
そのカディロフ氏は、プリゴジン氏の発言を受けて6日、バフムトからウクライナ軍を「一掃する準備ができている」とし、部隊はバフムトに移動する命令を待つだけの状態にあり、すでにいくつかの部隊が実行に向けて動き出しているとSNSに投稿していた。
〝プーチンの忠犬〟と揶揄(やゆ)されるカディロフ氏は、ロシアの治安部隊として大規模な民兵組織も抱え、その民兵たちはカディロフ氏に忠誠を誓っているとされる。これらの部隊はウクライナ侵攻にも派遣されている。
そんな中、ロシア国防省は7日の戦況説明で、バフムト攻略作戦を継続し、市西部で新たに2つの街区を支配下に置いたと発表した。同市の南西方面では航空機や砲撃で空挺部隊を支援し、ウクライナ側の機械化歩兵部隊などに損害を与えたとしている。