注目ポイント
スイスは技術開発分野で最先端を行くが、軍事利用を防ぐためのルール設定には消極的な姿勢を見せる。
スイスには倫理的な問題に関する連邦レベルのプログラムは存在しない。チューリヒ大学には研究者のための意識向上プランがあるが、この研修プログラムは義務ではない。EPFLでは、新入生は倫理科目が必修だが、すでに存在するチームの学生は選択科目であり、履修の可否は各チームを率いる教授の意思に委ねられる。
イスラエルの防衛を請負い、軍事用にAI搭載ドローンの開発に貢献したエルビット・システムズは、スイスに2つの子会社を持つ。スイスの新型偵察ドローン「ADS15」はエルビット社の製品だ。同社は公式ホームページで、スイスの技術水準の高さと研究施設の魅力を力説している。
イスラエルとスイスの共同研究を推進するSNSFは「研究活動は組織化されるべきだ。そうすれば悪用を防ぐことができる」と書いている。リスクの疑いがあるケースではSNSFも対処に動くが、その責任は「主に研究者とその研究機関」にあるとする。今のところ非平和的利用のリスクに関して、研究者が参考にできる標準化された評価法はない。
連邦政府は、産学連携推進機関「イノスイス(Innosuisse)」を通じて企業に注意喚起している。しかしそれぞれの研究・開発に直接関係する法的要件の遵守は企業側に委ねられている。「イノスイスはこの点において責任を負うことはできない」
連邦政府は、SNFSとイノスイスのためにガイドラインを作成したが、義務付けてはいない。連邦教育研究革新事務局(SBFI/SEFRI)は「大学とそこで働く研究者たちが科学の公正性を司っている」と書いている。「これを、どういった形で実践するかは、(研究内容または研究者によって)大きく異なる」
※この調査報道はメディア支援団体JournaFONDの助成金により支援を受けている。初掲載は2023年1月15日付の大衆紙ブリック紙日曜版他のサイトへ。
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