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ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、激戦が続くウクライナ東部の要衝バフムトから傭兵の全面撤退をちらつかせている。これまで「バフムトでの戦果はワグネルによるもの」と主張してきたプリゴジン氏への警戒感から、軍はワグネルへの砲弾支給を大幅に減らしたことで、同氏と軍指導部の対立が深まっている。
攻防戦が続くウクライナ東部の要衝バフムトに、多くの戦闘員を送っているロシアの民間軍事会社ワグネル・グループ率いるエフゲニー・プリゴジン氏は、先週末に公開されたロシアの軍事ブロガー、セミョン・ペゴフ氏とのインタビューで、弾薬不足についてロシアのショイグ国防相に最後通牒を出したことを明らかにした。
プリゴジン氏は、「われわれは毎日、何千もの遺体を収容した棺桶を積み上げている」と多くのワグネル戦闘員が犠牲になっていることを説明。「弾薬不足が解消されない場合、臆病なネズミのように逃げ惑わないよう、われわれは撤退するか死ぬかのいずれかだ」と発言。ショイグ氏が弾薬供給の追加に応じない場合、ワグネルの戦闘員はバフムトから撤退すると言い切った。
「われわれは愛国者だ。弾薬があるうちはバフムトに行くが、(残りの)弾薬は数週間分ではなく、わずか数日分だ」 とも語った。その上で、プリゴジン氏は4月27日を期限とし、ショイグ氏に24時間以内の返答を求めたが、すでにその期限は過ぎている。ショイグ氏が反応したかどうかは不明で、ワグネルの戦闘員が戦地から撤退したこともまだ確認されていない。
ワグネルは、ロシア軍がウクライナの補給線を遮断しようとする中、戦闘が激化するバフムトをめぐり、すでに10か月にわたる血なまぐさい戦いで重要な役割を果たしてきたとされる。
米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」によると、プリゴジン氏は、ワグネルが要求している1日4000発の砲弾のうち、800発しか受け取っていないと主張。だがISWは、実際にワグネルは1日約8万発の砲弾を必要としており、これはロシア国防省がワグネルの影響力を弱めようとする明らかに意図的な弾薬の供給量だとみている。
ここ数か月、プリゴジン氏はしばしば弾薬の不足について〝砲弾飢餓〟と呼んで不満を漏らしており、ロシア国防省が故意に戦闘員を犠牲にしていると非難している。3月には軍部に苦情を申し立てた後、ロシア政府はもはや同氏との接触を断ったと漏らした。これまでワグネルとロシア軍指導部はバフムトでの戦果をめぐり、長期にわたる確執を深めている。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日のオンライン会見で、ロシアが侵攻し、激戦地バフムトとその周辺で昨年12月以降、ロシア側の死傷者が計約10万人に上ったと米国が推計していると明らかにした。うち2万人以上が死亡したとみている。