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米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは1日、中国が公式統計年鑑などに対する海外からのアクセスを制限、もしくは全面的に遮断することで、自国経済に関する情報を〝ブラックボックス化〟したことに、外国の企業や投資家らは警戒感を示していると報じた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は1日、国家安全保障を重視する習近平国家主席の意向を受け、中国当局は「企業の登録情報や特許、調達文書、学術誌、さらには公式統計年鑑などに対する海外からのアクセスを制限、もしくは全面的に遮断している」と伝えた。
特に大きな懸念となっているのが、中国で最重要級のデータベースを提供している上海拠点の金融情報サービス大手・万得信息技術(ウインド)へのアクセスが断たれたことだとWSJは指摘。同社の経済や金融に関するデータは、国内外のアナリストや投資家らが幅広く活用しているという。
西側の専門家によると、中国では先月、「反スパイ法」が改正された後、国外のシンクタンクや調査会社などがウインド社との購読契約を更新できなくなり、ウインド側はその理由を「コンプライアンス面の問題」としている。
WSJ紙によると、中国政府は同国のリスク評価を多国籍企業に提供している欧米の経営コンサルタント会社などを精査し、圧力をかけ始めていて、情報の〝ブラックボック化〟により規制も強化された形となった。
こうした動きの背景には、毛沢東以来、最も強力な指導者となった習近平氏の、「西側諸国、特に米国が中国共産党の権力維持に脅威をもたらしている」という確信が深まったことがあると専門家はみている。 習氏は先週、政治局の会合で、「開発と安全保障の調整を改善する必要性」を強調。これは、外国からの投資を受け入れるより、外国からの脅威を防ぐことを優先するというシグナルと受け止められている。
WSJ紙は中国のこうした取り組みは、中国への投資をめぐる地政学的リスクの高まりについて、すでに取り組んでいる外国企業や投資家の不安を増大させていると指摘。米中関係悪化により、すでに多くの経営幹部が一部の事業を中国から移すか、中国との関係を減らすことを検討しているという。
30年以上も中国に投資してきたベンチャーキャピタリストのゲイリー・リーシェル氏は同紙に、「中国政府が中国を理解するのを難しくすればするほど、中国市場は資本、特に長期投資にとって魅力的ではなくなる」と述べた。
中国の投資環境に関する先月28日の声明で、米国最大のロビー団体である米国商工会議所は、多国籍企業が中国のリスク評価に活用する専門サービス会社に対する同国政府の精査が強化されていることに対し、この行動は「ビジネスを行う上での不確実性やリスクを劇的に高める」と警告した。