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訪米した韓国の尹錫悦大統領とバイデン大統領は先週、共同文書「ワシントン宣言」を発表。「北朝鮮が韓国を核攻撃すれば、米国は迅速かつ圧倒的で決定的な対応を取る」と警告したことに北朝鮮は4月30日、強く反発。バイデン氏を「老いぼれ」と呼び、核戦力の強化を続ける意志を明確にした。
北朝鮮の国営・朝鮮中央通信は4月30日、先週の米韓首脳会談で米国による韓国への「核の傘」提供を軸とする拡大抑止強化を盛り込んだ「ワシントン宣言」を発表したことを非難し、「米国と同盟国の北朝鮮敵視を再確認した」とする論評を表明した。その上で、「わが国が憂慮される環境に相応する軍事的抑止力を培うことは当然だ」とし、核戦力の強化を続ける意志を明確にした。
論評は韓国の尹錫悦大統領が訪米し、バイデン大統領と合意した内容を詳細に伝えた。北朝鮮が核攻撃すれば、「政権の終焉を招く」とのバイデン氏の発言を取り上げ、米国が対話を求め、「敵対的な意図はない」と表明してきたことがウソだったことが露呈したと主張した。
同29日には、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹、金与正党副部長が朝鮮中央通信を通じ、米韓首脳による共同文書「ワシントン宣言」を非難。バイデン氏の「北朝鮮が核攻撃すれば政権の終焉を招く」と述べたことを「未来がない老いぼれの妄言」として反発した。米朝関係が現在のように緊張していた17年9月、金正恩氏が声明で当時のトランプ米大統領を「老いぼれ」と呼んだことがある。
また、尹氏についても与正氏は、「米国からの空っぽの宣言を受けてありがたがる愚かな人間」と評し、「尹錫悦が自身の無能で安保を俎上に載せ、大胆にどこまで行くのか見守る」と非難した。
さらに与正氏は、戦争抑止に失敗した場合、先制攻撃を行う核戦力の「第二の任務」を一層完璧に整えるとも明言。北朝鮮は核戦力開発を2021年からの国防5か年計画に基づいて進めており、「ワシントン宣言」は今後、開発を正当化する名目にするとみられる。
与正氏は、同宣言が「極悪な敵視政策の産物で、危険な結果を招く」と主張。米韓が合同演習を行えば、北朝鮮の自衛権行使も「正比例して増大する」との考えを表明した。
米韓首脳会談後の共同記者会見で尹氏は、「平和のため、圧倒的な力の優位で拡大抑止を高める」と表明。バイデン氏は核運用計画に関して韓国と「より緊密に協議する」と強調。両首脳は、今年70周年の米韓同盟をさらに発展させる考えで合意した。
また、尹氏は先月27日に米議会上下両院合同会議で演説し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威に対抗するため「韓国と米国、日本の3か国の安全保障協力を加速する必要がある」と強調。「民主主義と法の支配を守らなければならない」とし、台湾に圧力を強める中国やウクライナ侵攻を続けるロシアを暗に批判した。