注目ポイント
世界的に海外旅行が再び盛んになり、台湾も海外からの観光客を歓迎している。そこで今月の『光華』は、西拉雅(シラヤ)国家風景区の、サステナビリティをコンセプトとする観光スポットを訪れてみた。かつての軍事訓練場を改造した緑の建築、農村の廃墟に新たな創意を取り入れた美しい大型のゲーム場、放置されていたビンロウ畑から生まれ変わったエコ農場、それに流木を利用したバイオリン作りを打ち出した小さな町などだ。長年にわたって放置されていた建物や土地が、どのように生まれ変わったのか、ぜひご覧いただきたい。
文・陳群芳 写真・莊坤儒 翻訳・山口 雪菜

台湾西南部に位置する西拉雅(シラヤ)国家風景区は、温泉や悪地、多数のダムなど豊富なランドスケープに恵まれている。広さは台湾第二、台南市と嘉義県にまたがる広大な風景区である。シラヤの名は、この地に昔から暮らしてきた原住民族(平埔族)のシラヤ族から来ている。シラヤ国家風景区には現在もシラヤの集落がいくつかあり、美しい風景に文化的魅力をもたらしている。

シラヤと緑の建築
シラヤについて知りたければ、まず風景区内の官田ビジターセンターを訪れるとよい。ここは2020年にオープンしたグリーンビルディングで、外観にはシラヤ族の刺繍に見られるモチーフの花が取り入れられている。弧を描く建物の形はシラヤの「祀壺文化」から来ている。阿立祖(Alid、祖先の意味)を信仰するシラヤの人々は、瓶や甕など壺状の容器に水や酒を入れて祖先を祀ってきたのである。
ビジターセンターにはシラヤ文化の展示エリアもあり、歴史や信仰、食文化、風習などの説明のほか、服飾や工芸品の展示もあり、ここを訪れればシラヤについての理解を深められる。
敷地面積11ヘクタール、長年にわたって放置されてきたかつての野戦訓練場に、管理処が本来の丘陵地形の起伏を活かして事務センターを建てた。3階は展望台になっていて広々とした風景が見渡せる。園内の草原にはSIRAYAの文字が浮かび、タイワンジカのアート作品がちりばめられている。かつて嘉南平原にたくさんの鹿が生息していたことを象徴しており、人気の撮影スポットになっている。傍らの遊歩道を歩けば広大な敷地を巡ることができる。センダンの木やノウゼンカズラ、ラクウショウなどが四季折々の風景を織りなし、散歩やピクニックにふさわしい。
シラヤ国家風景区遊憩課の張麗君課長によると、ここ数年、管理処では山海圳国家緑道と協力してハイキングやサイクリングのイベントを開催し、また菱波官田サイクリングロードを設置して親子での利用を呼び掛けているという。沿線には八田与一記念園区や烏山頭ダムなどがあり、「菱波仙子」と呼ばれるレンカクが菱池の上を舞う姿も見られる。日本統治時代に八田与一が嘉南大圳を開いた物語や、官田の自然と文化、歴史にも触れられる。

農村のゲーム
官田ビジターセンターから車で10分ほど行くと台南芸術大学の隣りの大崎村落創芸基地に到着する。古い家屋が残る普通の農村のように見えるが、案内所の「芸農号」を訪れてゲーム地図をもらうと、村は「ゲームの小島」となる。