注目ポイント
2024年1月13日に行われる台湾・総統選まで8カ月余りとなり、野党の候補者選びが大詰めを迎えている。最大野党・国民党、第三勢力の台湾民衆党とも、新総統就任のちょうど1年前となる5月20日ごろに決める予定で、最終調整を急いでいる。一足早く頼清徳副総統を公認候補に選んだ与党・民進党を追う展開となるが、野党側が候補者を一本化できるかどうかも鍵を握る情勢となっている。
民進党は独立色抑制の頼清徳氏
総統選を巡っては、与党・民主進歩党は頼氏以外に党内予備選への届け出がなく、4月12日に頼氏を正式に公認候補に決定した。頼氏は前回2020年総統選の党内予備選で現職の蔡英文総統に挑んだが敗れており、今回は4年越しの思いがかなった。
独立志向が強いとされる頼氏だが、公認決定の記者会見では「台湾はすでに独立した国家であり、改めて独立を宣言する必要はない」と述べるなど独立色を抑え、蔡氏の現状維持路線を引き継ぐ姿勢を打ち出した。
これに対し、最大野党・中国国民党の朱立倫主席は4月27日、「総統選の公認候補登録作業は5月中に終えたい」との考えを示した。同党幹部は、5月17日との見通しを明らかにしている。朱氏は、2016年総統選の公認候補決定は6月、2020年総統選は7月だったことを挙げ、「こうした時期では遅すぎる」として、5月中に態勢を固め、できるだけ早く民進党を追撃したいとの思いをにじませた。

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国民党は侯友宜氏リード、郭台銘氏も意欲
これまでのところ、2022年11月の統一地方選で圧勝した侯友宜・新北市長が各種の世論調査でリードしている。侯氏は警察官僚出身で、クリーンな市政運営への評価が高く、大衆的人気がある。総統選出馬への態度は明らかにしてこなかったが、4月12日には記者団に「困難に立ち向かい、挑戦する準備は整っている」と受けて立つ決意を表明している。
前回総統選でも名乗りを上げたEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業創業者の郭台銘氏も意欲を見せている。4月27日には、台湾中部・台中市にある東海大学での講演で学生の質問に答え、「一部の政治家が、自分が当選したいために反中をあおっている」と民進党を批判し、「独立反対を堅持し、科学技術の発展を目指せば、誰もが豊かになれる」と中台の交流強化を訴えた。
郭氏は前回総統選の党内予備選で高雄市長だった韓国瑜氏に敗れており、今回も侯氏と事実上の一騎打ちとなる見込みだ。今のところ、侯氏が優勢とみられているが、一部の立法委員(国会議員)らは郭氏を強く支持しており、党執行部が対応を誤ると、党分裂の危機を招きかねない。
このため、国民党は従来、世論調査と党員投票を組み合わせた党内予備選を実施して公認候補を決めていたが、今回は世論調査を重視しながらも、最終的には党執行部が候補者を指名する方式に切り替える方針だ。

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第三極、柯文哲・前台北市長の動き
こうした二大政党の動きをにらみながら、台湾民衆党の柯文哲・前台北市長も着々と手を打っている。4月8日から20日間にわたって訪米し、総統選出馬に向け各界と意見交換した。4月28日に台湾に戻った柯氏は、桃園国際空港で記者団に、5月8日まで受け付ける党内手続きを早急にすませ、党の公認指名を受けた後、5月20日までに記者会見を開いて出馬表明するスケジュールを披露した。