注目ポイント
中国が欧州との関係悪化に苦慮している。駐フランス大使の旧ソ連諸国の主権に関する発言が各国から非難を浴びる一方、上海モーターショーでは独自動車大手BMWの行動を巡って同社の不買運動が起きるなど、このところ欧州との距離が広がるトラブルが続く。米国が主導する中国包囲網切り崩しのため、欧州を味方に付けたい中国だが、ちぐはぐな動きが目立っている。
4月初めには、訪中したマクロン氏がメディアのインタビューで、台湾問題を「我々のものではない危機」だとし、米中いずれにも追随しない「第三極」を目指すべき、との考えを表明し、習政権には外交的に大きなポイントを稼いだとの思いがあった。
それだけに、想定外のところで上がった火の手に、習政権も防戦を強いられた。特に、盧氏の発言を巡る欧州との関係悪化は、マクロン発言で上げた成果に水を差された形で、中国寄りの姿勢を見せたマクロン氏にとっても打撃となった。
韓国とも非難の応酬に、G7控え苦境の中国
中国は欧州だけでなく、韓国とも問題を抱えている。韓国の尹錫悦大統領は4月19日に配信されたロイター通信のインタビューで、台湾海峡の緊張の高まりについて「(中国の)力による現状変更の試みで起きたことで、我々は国際社会とともに、このような変化には絶対反対だ」と述べた。
これに対し、中国外務省の汪文斌副報道局長が定例会見で「中国の内政問題であり、他人が口出しすべきではない」と批判したところ、韓国外務省が「中国の国家としての格を疑わせる外交的欠礼だ」と激しく反発するなど、非難の応酬になっている。尹氏は4月26日、米首都ワシントンでバイデン大統領と首脳会談を行い、米韓連携強化を打ち出す見通しで、中国にとっては分が悪い展開だ。
主要7カ国(G7)は4月16~18日、長野で外相会合を開き、ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾への軍事的圧力など「力による支配」に反対することで、結束を確認した。5月に広島で開催されるG7首脳会議(サミット)でも、対露・対中政策が最大のテーマとなる。こうした流れを変えたい中国だが、目の前の対応に追われているのが実情だ。
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