注目ポイント
北太平洋の真ん中に集まった大量の浮遊プラスチックゴミなどを新たな棲家として、通常は浜辺などに生息する小さなカニやイソギンチャクなどの沿岸生物が繁殖していることが専門家の最新の研究で明らかになった。
英学術誌「ネイチャー・エコロジー&エボリューション」で先週発表された研究論文によると、北太平洋の海洋ゴミが集中する海域とされる「太平洋ゴミベルト」の調査から、浮遊ゴミの70%以上から通常沿岸に住む生物が生息しているのが発見された。中には、浮遊プラスチックゴミの中で繁殖していることも分かった。
外洋で生きる沿岸種の発見は「前例のないことではない」とした上で、研究者らは沿岸種の多様性とその多さは新たな発見だと指摘した。
同論文は、「研究結果は、海洋環境と新たな棲家となった浮遊プラスチックゴミが明らかに沿岸種に適していることを意味し、さまざまな生態の歴史的特徴を持つ沿岸種が、外洋で生き残り、繁殖し、複雑な個体群と群集構造を持つことを示している」と説明した。
さらに、この調査結果は、海洋のプラスチック汚染が、通常は外洋で生き残ることができない種の新たな浮遊生態系を作り出していることを示唆しているという。
今回の研究で専門家は、2018年11月〜2019年1月の間に太平洋ゴミベルトから回収した漁網やロープ、ボトルなど105個の廃棄物の中から見つかった生物を調査。その結果、廃棄物の約3分の2には沿岸種と外洋種が共存していたことが判明した。
今後数年間でさらに多くのプラスチックが海に流れ込むことは確実で、専門家は、各国政府が対策に取り組まなければ、これから2040年までの間にプラスチック廃棄物が海に流れ込む速度は約2.6倍になると警告している。
そんな太平洋ゴミベルトについて米CBSニュースやCNNは以下のようにまとめた。
太平洋ゴミベルトはどこにあるのか?
米国海洋大気庁(NOAA)によると、実際にプラスチックの大きなゴミの山は海洋には一つもない。ただ、プラスチック廃棄物のような浮遊ゴミはハワイと米カリフォルニア州の間の北太平洋に集中し、風と波により絶えず移動しているという。
どの位の大きさなのか?
2018年の研究は、太平洋ゴミベルトは米テキサス州の約2倍の面積に相当し、浮遊ゴミ群には少なくとも7万9000トンのプラスチックが含まれていると推定される。オランダに本部がある環境エンジニアリング団体「オーシャン・クリーンアップ」は同年以降、数万キロ単位の浮遊廃棄物を回収している。
また、浮遊ゴミ群は大きな廃棄物と推定約1.8兆個のマイクロプラスチックの両方で形成されているという。それらのプラスチック片の大部分は漁業関係のものだが、総量の10〜20%は2011年の東日本大震災の津波によるものとみられる。