注目ポイント
台湾の戦闘機パイロットが着用し、ユニークな図柄が世界中で話題となった一枚のワッペン。タイワンツキノワグマ(台湾黒熊)が、中国の習近平国家主席似と揶揄されるディズニー版「くまのプーさん」にパンチをお見舞いしているデザインだと誰もが思っていたが、発案者であるミリタリーグッズ店経営の男性によると、「私が創作したオリジナルキャラ」だという。あっという間に売り切れて、再入荷時期も未定という人気爆発「クマのシーさん」ワッペン誕生の舞台裏について直撃インタビューしてみた。
「版権上の問題なし!」と発案者堂々
「一見ディズニー版“くまのプーさん”のようですが、あくまで私がデザインした創作物。オリジナルキャラクターです。別モノなのです」

一連の報道でワッペンが大評判になっているのを受け、台北郊外・桃園国際空港がある桃園市の中心部でミリタリーグッズ店「鉄鳥迷航空文創館」を営み、同ワッペンを製造販売している徐福佑(アレック・スー)さん(46)を訪ねて直撃インタビューを申し込んだところ、快く承諾してくれたうえに、意外なうちあけ話が飛び出した。
徐さんは退役軍人で、かつて空軍に属していたため、中国軍機が頻繁に台湾周辺に飛来するようになるなか「精神の戦力」として軍を応援する思いをワッペンに託し、「自分でデザインしてネットや店舗で販売してきた」という。
「当店オリジナル作品として商標登録しており、その認定書もあります。だから版権上の問題はありません」という。さすがはプロ。用意周到で抜かりはない。もちろんこのワッペンはあくまで1枚200台湾元(約870円)で誰でも買える民間商品であり、軍のオフィシャルなものではない。
その特徴あるデザインは、中国の習近平国家主席に似ているとされ、習氏を指す符丁にもなっているディズニー版「くまのプーさん」に一見よく似た黄色い「クマのシー(習)さん」に対し、台湾の「青天白日満地紅旗」を手にした台湾固有種のタイワンツキノワグマが怒りの表情でパンチをお見舞いしている場面であり、「クマのシーさん」が手に持つハチミツの壺には中国の「五星紅旗」と同じ5つの黄色い星が配されている。また下方には「Scramble!」(緊急発進) の文字が。この商品、「注文が殺到し、あっという間に売り切れてしまいました」と徐さんはいう。
話題沸騰も在庫はカラ、再入荷時期も未定
ワッペンが世界で注目されたきっかけは、蔡英文総統がマッカーシー米下院議長と米ロサンゼルスで現地4月5日午前に会談したことへの対抗措置として、中国軍が台湾周辺で10日までパトロール称する軍事演習を実施した際、これに対応した台湾の国防部(国防省)が9日、IDF(経国号)戦闘機のパイロットが機体点検作業に当たる姿を公開したことだった。
「その戦闘機パイロットが緑色の軍服ジャケットの肩口にウチで購入したワッペンを着けていた。それを青年日報(国防部軍事新聞通信社)などが報じ、ツイッター上でも拡散されて大きな話題となった」

このニュースは内外に広がり、SNS上でも話題沸騰。徐さん自身も「軍は上客で、よくネットを通してウチの店の商品を購入してくれるのですが、ツイッター上の写真を見て、実際に最前線の空軍パイロットがこの商品を愛用していることを知りました」という。