2023-04-27 政治・国際

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第13回:足並みが揃わない西側諸国と対照的に堂々と「浸透」を進めている中国

注目ポイント

仏マクロン大統領の台湾をめぐる発言は、台湾、そしてウクライナ政策で西側陣営の足並みが揃っていないころを露呈しました。一方、中国は対台湾政策の分断を図ることも視野に入れてか、秘密警察など“中国的”な活動を国外で進めていることが明らかに。こうした問題をどう考えばいいのか。山本一郎さんの月イチ連載です。


フランスのマカロン大統領が台湾に関して余計なことを言って大変な炎上をするという一幕がありました。

Macron on Taiwan: 'An ally not a vassal', says France leader|BBC

報道の内容をしげしげと見ていると、割と欧州政治事情のどろどろとした何かを感じさせつつ、表現された台湾関係の内容については「なに言ってんだこいつ」ってのが並存しているため、どうにも味わいの深いネタになっております。

釈明された内容を呼んでもまったくピンとこないというか、お前らフランス人の欧州経済主権が大事という話が対米追従の議論となるまでは良いとして、なぜ毛糸洗いの大統領が台湾問題を「我々(欧州)の問題ではない」とか言ってしまうのかは要審議です。

“仏の台湾に対する立場に変更ないこと確認” 日仏外相会談|NHK NEWS WEB

それに関連して、欧州委員会のフォンデアライエンさんがなかなかダイレクトな発言を対中国には繰り返していて、欧州内でも対米云々とは別に対中国政策については論争的というか、想定されるべき事態に対していろんな評価があるぞということが分かります。

一連の仏大統領発言に対して台湾側が抑制的な発言に終始していることがまだ救いだったんですけれども、あのタイミングでの中国訪問ってなんやねんというのはあります。もちろん、年金を巡るフランス政治の混迷もさることながら、ロシアによるウクライナ侵略を踏まえて仲介役としての機能を果たしたいフランスが何か事情があって中国とやり取りするべき立場を維持したいのかもしれませんけれども、そもそもフランスがウクライナの問題で中国と接触して何の利益を導き出せると思ったのかはいまだ謎です。

Taiwan responds to Macron's reluctance to 'follow US' on China|Taiwan News

結局、フランスの外交的な変な方向への踏み込みの結果、フランス大統領府も外交筋も火消に走り回り、日本も乗り出していって事態の鎮静化を図る一助をしなければならなくなる状況となったのは何やねんと思うわけですが、昨年のアメリカ下院議長ペロシさんの電撃訪台のことも踏まえて西側陣営の対ウクライナと、ポストウクライナ扱いされる対台湾両面の政策において相応の足並みが揃わない問題はいま一度問われるべきなんじゃないのと思います。攻め込まれたウクライナが悲惨過ぎてどうしようもないなというのもあるんですが、熱量が上がってるのか下がってるのかよく分からない台湾周辺の問題において、中国は経済を重視しているので対中投資が維持されている限りは大丈夫という割と楽観的な観測が中国外交筋から引き続き出ているのを見ると対台湾政策の分断を図っているんだろうなあという感じは否めません。

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