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2023-04-21 政治・国際

中国、南極の新観測基地建設再開で拠点拡大 西側は人民解放軍の偵察能力が高まると警戒

© Photo Credit: GettyImages

注目ポイント

中国がこのほど南極で5か所目となる観測基地の建設を5年ぶりに再開し、拠点を拡大していることが米シンクタンクの新たな衛星画像で分かった。同シンクタンクは、この基地がオーストラリアやニュージーランド上空の信号情報などを収集するのに適し、「他国の衛星通信の傍受に使用できる」と指摘。西側は人民解放軍の偵察能力が高まることを警戒している。

戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によると、中国が建設を進める南極圏のロス海に近い難言島(イネクスプレシブル島)の新基地は、衛星地上局を備えた観測所を擁する見通しで、中国が南極大陸にアクセスする上で「大きなギャップを埋める」のに寄与するとみられる。

ロイター通信は、「中国は北極圏の新航路開拓や、南極圏での調査拡大を目指しているが、西側は人民解放軍の偵察能力が高まる可能性を懸念している」と報じた。

CSISは今年1月に撮影した衛星画像で、5000平方メートルの基地に仮設の建物やヘリポート、中心となる建物の基礎などを確認。2024年までに建設が完了すると推測している。また、「基地は中国の科学的な極地観測衛星の追跡と通信を可能にする一方、他国の衛星通信の傍受にも同時に使用できる」と指摘した。

特にオーストラリアやニュージーランド上空の信号情報などを収集するのに適した位置にあり、中国の砕氷船「雪龍」向けの埠頭も建設される見通しだという。

CSISはロイター通信に対し、米国は南極観測基地としては最大のマクマード観測基地を含め、南極大陸でより大きな研究プレゼンスを維持しているが、中国の足跡は急速に拡大していると指摘した。中国の5番目の基地は、マクマードから320キロの場所にあるという。

中国も締約国である1959年の南極条約は、領有権主張の凍結を定め、同大陸での活動は「平和目的」に制限している。軍関係者が科学研究を行うことは許可されているものの、基地の設置、演習の実施、武器のテストは禁止されている。

2022年の米国防総省の報告によると、中国の新たな南極の施設は将来、天然資源や海洋アクセスへの主張を固めるもので、人民解放軍の能力を向上させることを意図していた可能性が高いとしている。ただ中国側は、南極観測基地を諜報活動に使用するとの憶測を否定した。

中国は現在、長城基地、中山基地、崑崙基地、泰山基地という4つの観測基地を持っている。これらは、それぞれ特長があり、例えば中山基地は南極東部に位置し、地質学、地球物理学などの作業に適し、南極大陸氷床の最高地点に位置する崑崙基地は、氷床コア科学、大気科学、天文科学などの研究に向いているとされる。

そして、5つ目の基地をロス海に浮かぶ難言島に建設しているのだ。

米外交政策評議会(AFPC)の国家安全保障問題担当上級研究員アレクサンダー・グレイ氏が2021年12月に米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿した「南極大陸の環境に脅威もたらす中国」と題された論文によると、中国は南極基地に人民解放軍当局者を多数派遣し、軍事目的に転用できる衛星通信受信施設として利用していると解説した。

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