注目ポイント
絶え間なく変化を続ける東京。都心部を環状に結ぶ“東京の大動脈”であるJR山手線の利用客の推移は、そんな東京の変化を如実に反映する。2000年以降の約20年間の変遷から何が読み取れるのか、鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏が解説する。
駅の規模を図る数字に、改札を入った人を示す「乗車人員」がある。私鉄は改札を出た人も合わせた「乗降人員」を用いることが多いが、JR各社は乗車人員を用いている。数字を見る上では、改札を通る他社線との乗り換えは計上され、改札を通らないJR線相互の乗り換えはカウントされないことに注意が必要だ。これをふまえた上で、山手線各駅の2000年から2021年までの1日平均乗車人員の推移を見ていこう。
乗車人員は経済状況や駅周辺開発、鉄道整備の進展によって変化する。例えば大崎駅は2000年の約5.7万人から2019年は約17.7万人まで増加しているが、これは2002年に都市再生特別措置法に基づく再開発計画が始動し、同時に埼京線の大崎延伸、湘南新宿ラインの停車が始まったことによるものだ。
ユニークなのがコリアンタウンの最寄りである新大久保だ。2009年頃までほとんど横ばいだったが2011年と2018年前後に急激に増加している。これは2010~12年頃のK-POPを中心とした韓流ブーム、2016~17年頃のBTSやTWICEの人気や韓国グルメなどの韓流ブームで新大久保を訪れる人が増えたためだ。
規模の小さい駅は外部要因の影響を受けやすいが、大規模ターミナルになると大きな変化は受けにくい。例えば乗車人員1位のJR新宿駅は75万人前後(コロナ前)、2位のJR池袋駅は55万人前後(同)で推移している。
そんな中、特徴的なのが3位から5位に位置する東京、渋谷、品川の関係だ。2012年までは渋谷、東京、品川の順だったが、2013年に東京が渋谷を上回った。2016年に品川が渋谷を上回り、2019年時点では東京、品川、渋谷の順になったが、コロナ禍以降は再び渋谷と品川の順位が逆転した。これはどのような変化が影響しているのだろうか。
まずは東京駅のグラフを見ると、2000年から2011年までおおむね横ばいだったが、2012年以降は高いペースで増加しており、2011年の38.0万人から2018年には46.7万人まで増加した。前述の通り改札内の乗り換えはカウントされないため、東京駅を目的地とする利用者と、他社線との乗り換え利用者が増加したことを意味する。
前者は東京駅周辺の再開発の進展が影響している。東京駅では赤レンガ駅舎の復原が2012年に完了し、八重洲口の整備も進んだ。2010年代の景気回復で大手町など周辺ビジネス街の人流が増加したことも影響しているだろう。